築城せよ!

愛知県猿投町(さなげまち) 、過疎化が進むこの町では、地域活性化のため城の復元を目指す学者”岩手”(津村鷹志)と住民達が、その場所に工場誘致を計画する行政側と対立していた。ある日、うだつの上がらない役場職員”石崎”(片岡愛之助)と城復元の責任者”井原”(阿藤快)、そしてホームレスの三人が古井戸に落ちてしまう。


翌日その三人は、400年前に城の完成が出来ず無念の死を遂げた三人の武将の霊が乗り移り、住民の前に甲冑姿で現れ住民達に「築城せよ!」と号令を発するが‥。

以上が09年の映画「築城せよ!」のあらすじであり、元々は地域活性化プロジェクトの一環として制作されたと聞く。例えばこういった昔の人間が現代に甦る的ストーリーの場合、現代の科学や文化に戸惑う、驚くといった場面が暫し続くが、この映画はそれらを最大に廃しすんなりとストーリーが展開する。反面突っ込みどころとでもいうか、無理な展開もあるにはあるがこれはこれで良い構成だと思う。

太秦ライムライトにも出演した井原の娘”ナツキ”役の海老瀬はなが好印象、また普段は三枚目の脇役が多い津村鷹志だが、この映画では格好良い配役になっている。それにしても片岡愛之助は巧い。ドジな役場職員の様も良いのだが、400年前の領主が乗り移ってからは水を得た魚のようだ。


ラストシーン、武者とウエディングドレスを着たナツキが、ダンボールで出来た城の天守閣に立つ姿は今迄にない違和感を覚えたが、見慣れると面白い構図だと感じるように、この映画は様々な先入観を持たずに鑑賞すべき展開と云える。
映画を見た感想は人それぞれであるが、何らかの政策や施行というものは今を重視するのか、または数十年、数百年後に重点を置くのか、色々な意味でダンボールで出来た城がその象徴のように思えて来る。