太秦ライムライト

昨年の六月に公開された「太秦ライムライト」を観た。感想を一言で述べるならとてもカッコ良かった。亡くなった健さんが昭和の男の寡黙、且つストイックの代名詞のように云われるけど、55年間で初主演となった福本清三も正にそれに相応しいと思う。

ストーリーは昔ながらのチャンバラ時代劇が消えようとしている現在の太秦を舞台に、チャップリンの「ライムライト」をモチーフに描いたヒューマン・ドラマ。
内容や進行に難しさはなく、それが演技を含め出演する人物を観察できる展開になる。個人的に佐幕派であり新選組フリークであった私からすると、ちょいの間ではあるが往年の土方歳三役、栗塚旭が出演していることが嬉しい。また映画初主演となるヒロイン役の山本千尋の目力が印象に残り、可愛いし将来この娘は伸びる、などと勝手に思い込む w


子供の頃から悪役・斬られ役としての彼の存在は知っていたが、福本清三という役者として意識したのは2003年の映画「ラストサムライ」だった。日本古来の精神性が描かれたこの映画もカッコ良かったが、その中でそれこそ絵に描いたような寡黙な侍の姿が適役だった。従って「太秦ライムライト」は予てより興味深々、そもそも台詞がなかった役者なので音量を上げないとちょっと言葉が聴きづらい場面があるものの、却ってそれが彼の素の自叙伝のように見えてくる。


最後のシーンで斬られた彼は桜散る中で倒れ、その後の展開は一切なく映画は終わる。この幕引きがまた印象に残るのだが、先程の健さんも含め男のカッコ良さの一つでもある寡黙さ・ストイック性を求むのであれば、矢張り男は余計なことは喋らない方が身の為でもあると改めて感じた。そして福本氏のように贅肉をそぎ落とした身体に改革しなければ‥と、出来もしないことに反省を促すのであった。