14/12 撮影記

●07日 いわき市中之作 竜ヶ埼鼻灯標+etc

「紺青の朝に頬寒く」~ F10・SS4・ISO200・C-PL+ND400 ~


早朝よりいわき市中之作の竜ヶ埼鼻灯標へ行く。太陽は既にやや高めに顔を出し、その斜光線で水平線がオレンジとなっていた。時折り訪ねては被写体とするこの灯標、震災後は中之作港からの出港はないため灯ることはない。撮影はいつも横構図でフレーミングするのだが、紺碧の海と空、そして水平線のオレンジの対比を縦構図で撮ってみた。


「冬涸ル」~ F8・SS1/1.3・ISO200・C-PL+ND8 ~


一年ぶりに四ツ倉町八茎の逢瀬の滝へ行く。昨年は凹凸と落石の多かった山道であるが、今年は幾分なだらかになっていたものの、男滝への細道は落石で崩れていた。そして以前から滝壷に横たわっていた倒木が手前側に動かされており、随分と景観が良くなっていた。今年は時を逃したがこの倒木に邪魔されていた落葉のグルグル、もしかすると来年は撮れるかも知れない。今回も女滝は周らなかったがいわきとはいえ山間部は寒い。滝自体は凍らないが各所に氷柱があり、薄っすらと雪が降った形跡がある。
撮影は冬の日影特有とでもいうか、色温度が高く寒色になる水流に悩まされる。WBを調整しても青味が払拭できず、後にレタッチで水流部分の彩度を落とした。構図は毎度同じ箇所からとなった。


雲焼け見ゆれ冬の海」~ F8・SS8・ISO100・C-PL+ND400 ~


昼食の後、陽が傾くの待ち久ノ浜の弁天島へ向かう。太平洋では夕焼けは見れないと思われがちだが、確かに沈む夕陽は見れないものの、右画像のように空や雲が赤く染まる様を見ることは出来る。海は穏やかで荒ぶることはなく、ベタ波・凪表情の画作りを行う。
撮影で気にかけたことは雲と引き際の波の表情だ。特に雲は棚引くというイメージではなく、一個一個の塊といった感覚なのだが、時間の経過と共に変わり行く雲の形を待つ。帰宅後、撮った写真を確認すると、長閑というかちょっと平和過ぎといった気もする。


「高密度空間」~ F8・SS3・ISO200 ~


暗くなり小名浜港に戻る。折角なので工場の夜景を撮って帰ろうという魂胆なのだが、早朝から撮り歩いていると既にイメージは枯渇、在り来たりな撮り方・構図となってしまい多くはボツとなる。先週もほぼ同じ時間に此処に居たのだが、気になるのは以前より各工場の照明が少なく、昨今の燃料代の高騰により不要な灯りは点けないのだろうか‥。


●14日 伊達郡国見町 泰衡ヶ蓮+etc


一ヶ月ほど前だったか仕事の途中で寄った国見町の泰衡ヶ蓮、当然のことながら朽ち果てた姿で転がっていたが、霜などが降ればそれ也に絵になるのではないかと向かってみた。一ヶ月前と比較し一層痛んだ姿に薄っすらと雪が積もり、やがて土と同化する過程を見たような気がする。併しよくよく眺めてみると茎から落ちない花托にはまだ淡い紅色を残すものもあり、「シンドラーのリスト」に描かれる赤い人形を思い起こした。


十二月の存在 op.1」~ F5.3・SS1/640・ISO100 ~


十二月の存在 op.2」~ F5.3・SS1/640・ISO200・C-PL ~


その咄嗟に浮かび上がったイメージを元に画作りを行った次第だが、誰も見向きもしない荒んだ季節の存在感を退色した世界に置いてみた。転がる花托は色彩的に豊かではなく、季節感を意識しモノクロで撮影を行う。


「十二月の存在 op.2」は失われた色彩の中に紅色を残した花托が一本だけ立っており、先に書いたように赤い人形を意識しその存在を中心に画作りを行う。今になって思うと絞りはちょっと開け気味というか、手前と奥のボケが強くなってしまった。


薄っすらと雪が積もった大地は弱めにモノクロ加工を行い、朽ちた蓮はコントラストと彩度を全体のバランスを考慮しながら+補正。仕上げは中央を除き明度を-補正する。


静寂烟りて山眠る」~ F8・SS1/5・ISO100・C-PL+ND4 ~


続いて時折り訪ねる飯坂町の赤川滝へ向かう。途中から雪が降り出したのだが、この時期としては水量があって冬特有の赤い川床となっていた。雑草が枯れると滝上部の小さい滝がはっきりと確認出来るようになり、今回の主点をそこに置く。
撮影は雪が激しくなりフィルターに着雪&くもって思うように撮影が出来ない。従ってC-PLとND4を使用しSS 1/5秒に決定、周囲の際立つ堆積岩を構図に取り込んだ後、フィルターを吹きながらの決め撮りを行う。結果として降雪とフィルターのくもりが自然のソフトフィルターと化し、独特の景観となったように思える。


●21日 南会津郡南会津町


行き先の予定もないまま車に乗る。というより写欲もイメージも浮かばない状態であったのだが、雪が降り続いていると聴く南会津に車を向けた。コースは羽鳥湖から下郷町へのいつものコース、当然ながらこれ以上車が通行できないとなれば無理せず引き返すつもりだが、幹線道路は除雪が行われておりこの先も一部を除き走行に支障はなかった。


羽鳥湖からの下郷町への途中、芦の原地内の罠かけ滝で車を停める。併し既に積雪で長時間停めるスペースは無く、更に樹木の雪は全て落ちており景観が芳しくないので撮影は行わなかった。この滝は時折り撮影しているが、未だ良いものが撮れずにいる。町内の塔のへつりにも寄るが、あまりにも殺風景、且つ早朝なので展望台のゲートも開いていない。
続いて南会津町前沢集落へ向かう。冬は入場料を取られないが集落内には入らず、小高い山から集落を見下ろす予定であったものの、雪が深くちょっとした雪山登山になる気配なので止める。


深 々」~ F8・SS1/500・ISO200 ~


前沢集落から旧舘岩村、高杖原の旧い茅葺きの納屋へ戻る。この建物は秋にも撮ったのだが、積雪時は初めてだ。当然積雪で納屋には近付けないが、国道沿いは除雪で道が細くなり三脚を立てるスペースもない。つまりは交差する車を避けながら手持ちによる撮影となり、じっくりと構図や露出を決める余裕はない。実はこの状態=被写体に近付けない、構図や露出を練れないなどなどが冬の写欲減退の一端でもある。因みに納屋の向かって左側にビニールハウスのパイプが立っており、この先もこのままになってしまうのだろうか。


撮影はそのパイプが入り込まない構図、つまりは縦構図となる。三脚が使用できないので通常の露出となり、降雪も構図の一部となる。時を待つことが可能ならじっくりと構図や露出を練れるのだが、民家の軒先に車を停めた状態ではそうも行かず、更には帰路の天候も気になり心残りの撮影となった。


●28日 いわき市久之浜町 弁天島+etc

「神在ル島」~ F8・SS1/2・ISO200・C-PL ~


天気予報によると初日の出は期待できないようだ。となれば三週間前に来たばかりだが、今の内に撮ろうといわきに行く。場所は定番の弁天島、まだ暗い内からカメラを携えた人をチラホラ見かけるが、天候が良すぎるのか空は赤く染まらぬ内に日の出となってしまった。最初は砂浜で待機していたのだが、その空模様に期待が出来ないと察し歩道橋の上に場所を変えた。歩道橋からは構図内に太陽は入らず、陽が昇ると空の彩りは赤からオレンジに変わってしまうものの、弁天島の斜面に陽が射し込む。
この日の満潮時間は09:00頃、風はなく非常に穏やかな表情の海は特徴が無く毎度のことながら長露による撮影を行う。弁天島へ続く橋の欄干は3.11の津波で壊れたままとなっており、何れ修復される時が来ると思うが赤い鳥居と同様、人工物でありながら構図の中で大きなウェイトを占める。


異空間」~ F10・SS1/2・ISO200 ~


さて早朝のこの時間帯に歩道橋の上に居るのは始めてのことなのだが、トンネル内の照明や構造が昔々あった海外ドラマ「タイムトンネル」を彷彿させ思わずカメラを向けた。


という訳で今年も終わりとなった。相変わらず上達しないワンパターンの写真ながら、よくもあっちこっちと出かけるなぁ‥と、我ながら感心してしまう。以前は撮影の度に撮影記を書いていたのだが、今は月末にまとめてupするようになりそれでももっと簡略化できないものかと思案中だったりする。正直な話し書く時間より撮影地に居る時間を長くすることが好ましいのだが、来年は今年以上に撮るという衝動に駆られる景観に出会いたいと願う。


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