只見川、川霧の息遣いを追う・・・午前の部

M.Hermitage

20日(土)、東北もいよいよ梅雨入りとなり、週末は重々しい雲といつ雨が降ってもおかしくないような空模様だった。先月から只見川では川霧が立っているようだが、タイミングが合わず今年はまだ撮れていなかった。・・・今回の撮影記は午前と午後の二部になる・・・

その川霧に期待し奥会津に向かえば、第三・第四只見川橋梁間では佳き景観となっており、まずは大沼郡金山町大字水沼字沢東の第四只見川橋梁俯瞰ポイントへ行ってみたが、画像のように完全なホワイトアウト状況になっていた。


このような状況の場合、個人的には五分から十分ほど様子を伺い、その間に目標物、此処では橋梁だが、その姿が確認出来れば居座ることにしている。併しながら今回その兆候はなく、場所を移動することにした。

色々と周った後、大沼郡三島町大字名入の第三只見川橋梁に立ち寄る。川面を漂っていた川霧が次第に山肌へと吸い寄せられるように移り変わり、景観はゆっくりと山霧の相へと移行していた。おそらく、川霧が蠢くように立ち上がるには、まだ気温が十分ではないのだろう。谷を満たす湿気はあるものの、霧が動き出す”きっかけ”が欠けている、そんな印象だった。


谷霧抄」~ F8・SS1/200・ISO400 ~


車両は05:53通過の上り422D。川霧は既に薄れつつあったが、川面は穏やかで、橋梁の姿が静かに写り込んでいた。霧が退いたことで谷の奥行きが際立ち、朝の湿り気を含んだ空気が一層澄んで感じられる。


列車の通過音が谷に吸い込まれて行くと、再び静寂が戻り、霧の名残だけが淡く漂う。川霧の最盛には届かなかったものの、霧が引き際に見せる一瞬の表情には、また別の趣がある。そんな奥会津の朝の深さを物語っていた。


続いて新緑の頃から撮影を行っていた、大沼郡金山町大字西谷字沖田かの第五只見川橋梁へ向かう。此処はその新緑と写り込み目的で通っていたのだが、春先の風の強さや強い陽射しに、思うような一枚がなかなか撮れずにいた。この日は薄っすらと川霧が流れ、これはこれでまた佳いのだが、この状況は長続きしないだろうと準備を始める。


静寂一献 #1」~ F10・SS1/200・ISO250 ~


静寂一献 #2」~ F10・SS1/250・ISO200 ~


#1は07:59通過の上り426D、#2は08:18通過の下り423D。絶好の薄曇り状態、そして川面は微動だにしない写り込みを保つ。車両通過の頃になると川霧は消えていたが、そんな静謐なる世界に列車がガタンゴトンと橋梁を渡れば、緑葉からの雫が一献、また一献、川に落ちていく気配が、耳の奥で幽かに響くようだった。


先に新緑の頃から撮っていたと記したが、陽射しや写り込みの具合は、むしろ空気が重くなり始めるこの季節こそ最も整うのかも知れない‥と、またひとつ勉強になった。


第五只見川橋梁を後にし、再び第四只見川橋梁へ向かう。すると杉林の中に熊の糞が落ちているのを見付けた。朝は気付かなかったので、おそらくその間に姿を現したのだろう。


下画像のように霧は消え、見通しの良い景観が広がっていた。こうなると写真的には面白味に欠けるのだが、フラットな光線の下、左右の山々に陰日向が生じない写真が撮れそうだった。


渡りゆく影」~ F10・SS1/250・ISO200 ~


車両は08:51通過の上り426D。此処に立つのは昨秋以来でもあり、久しぶりの景色を確かめるようにシャッターを切った。やや荒れていた川面も落ち着き、それ也の写り込みになる。


もう何年前になるだろうか、川霧目的で早朝、週末の度にこの場所に通う夏が数年続いた。その頃の車両はどの便も二両編成だったので、始発便がホワイトアウトで撮れなくても、次便まで動かずに居座っていたものだ。通ったところで川霧の気紛れに翻弄され、気に入った一枚が撮れるのは年に二枚ほど。つまり川霧とはそれほど厄介で、併し惹かれずにはいられない存在でもあった。


午前中の最後は、大沼郡金山町大字水沼字田下モから細越拱橋を望む。此処に立つのも昨秋以来になるのだが、崖際の立ち位置は木々に覆われ、以前よりいっそう狭く感じられた。いつものことだが、只見川を挟んだ遠景は、霞なのか靄なのかスッキリしない。


緑陰を縫う」~ F10・SS1/200・ISO250 ~


車両は09:26通過の下り425D。これからの季節は更に空気が重くなり、輪郭はますます曖昧になっていくのだろう。エッジが立たない景観には景観なりの趣があり、谷全体がゆっくりと盛夏へ向かう気配が静かに漂っていた。


第四只見川橋梁の撮影でも触れたように、曇りがちの空模様なので撮れたが、この時間、陽射しがあれば強い陰日向と霞等の乱反射で成立しない構図、場所でもあり、曇天の柔らかさが、谷の緑と列車の動きをそっと包み込み、僅かな時間だけ景色が整った‥そんな印象が残った。


この時点で午後から何処で撮るかを決めていなかったが、この日、実は冒頭で記したとある”きっかけ”を待っての撮影でもあった。果たしてその”きっかけ”が作用するか否か、それは午後からの天候次第と云ったところだ。


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