いわき市小名浜「支那そば 一力」
十年ほど前、当時は海での撮影が多く、昼食には「支那そば 一力」をよく利用していた。今回は三年ぶりの訪問となるが、あの頃に感じていた美味さを今も覚えているだろうか。或いは、自分の味覚が変わってしまってはいないだろうか・・・少し不安でもある。

13:00を過ぎて到着した。17台ほど停められる駐車場には数台分の空きが残っていたものの、人気店だけあって店内の待合席は既に埋まっており、順番を待つ人の姿が見られた。


メニューの内容に変化はなかった。価格は三年前と比べて100円~150円ほど上がっていたが、このご時世にあっては良心的だと思う。以前は醤油ラーメンの他、四月から十一月までは塩ラーメン、十二月から三月までは味噌ラーメンが加わっていた。今も続いているのかは定かではないが、実際のところ私が食べるのはほぼ特ラーメン一択だったりする。


以前と変わらぬ明るくて綺麗な店内は、四人掛けテーブル二卓、六人掛けボックス席二卓、カウンター七席という構成。レイアウトに変化はなく、壁に飾られた師匠・佐野実氏との写真もそのまま残されており、三年ぶりの再訪であったが、時の流れを感じることはなかった。

特ラーメン @1.200円+大盛り @150円
着丼したビジュアルは、記憶していたものと変わらないように見える。だが、この日ばかりは見た目を確かめるよりも先に、三年ぶりとなる味を早く確かめたかった。急ぐようにレンゲを手にしてスープを啜ると、以前と同様に煮干しの風味がふわりと口内に広がる。続いて鶏と豚の旨味が静かに重なり、あっさりとしながらも深みのある上品な味わいとなって喉元を通り抜け、適度な塩気が吸い込まれるように身体に沁み込む。
スープもシナチクも色合いは濃く見えるが、それはあくまで見た目の印象である。実際には過度な味付けではなく、シナチクも含めて全体が穏やかなバランスにまとめられていた。

麺は以前と変わらぬ中太ストレート麺。しっかりとした噛み応えがありながら歯切れも良く、ストレートながらスープを程よく持ち上げる。開店当初とは異なり、コスト面から使用する小麦粉は海外産へ変更されたと聞く。それでも噛むほどに小麦の香りは感じられ、十分に満足できる仕上がりだと思う。ただ、私には硬めの茹で加減に感じられたため、次回は柔らかめでお願いしてみようと思う。
チャーシューはバラ肉と肩ロースの二種類。箸で摘まめる形を保ちながらも、口に含むとほろりと崩れる。その食感と味の染み込み具合のバランスが実に良い。煮玉子やワンタンも抜かりなく、どれも主張し過ぎることなく一杯の中に収まっている。
全体を見れば、世の中には更に強い個性を持つ店や、飛び抜けた美味さを感じさせる一杯も数多く存在するだろう。だが「支那そば 一力」のラーメンには、それらとは異なる魅力がある。スープ、麺、具材のどれか一つが突出している訳ではない。全てが程良い位置で調和し、最後の一口まで安心して箸とレンゲを進められるのである。
三年ぶりに味わった一杯だったが、その印象は記憶の中にあったものと殆ど変わっていないように感じられた。変わらぬ味を守り続けることの難しさを思えば、それこそがこの店の何よりの価値なのかも知れない。
いわき市小名浜中町境4-11 月曜・火曜定休