凪ぎゆく空、往き交う灯

M.Hermitage

17日(土)、二週間前に続き、天候が良さそうなので相馬方面へ向かう。二週間前は雲が多く、思うような写真が撮れなかったが、果たしてこの日の夜明けはどんな表情になるだろうか。

この画像は、相馬市岩子字長谷地の岩子漁港。日の出の一時間前から撮影を始めたが、今回は良い形の雲が現れず、期待した朝焼けにはならなかった。結局のところ、私の写真は空模様、とりわけ雲の表情に助けられている部分が大きいようである。

少し場所を移動し、相馬市岩子字宝迫から松川浦大橋と鵜ノ尾埼灯台を撮る。上の画像は松川浦大橋、下の画像は鵜ノ尾埼灯台。後者を撮る頃には雲が現れ始めたが、時すでに遅しである。岩子漁港でこのような雲が広がってくれていればと思わずにはいられなかったが、尤も思い通りにならないのが自然であり、だからこそ何度でも足を運びたくなる。


「空も静かに流る頃」~ F10・SS1/800・ISO200 ~


この画像も岩子漁港だが、住所は相馬市岩子字坂脇になる。夜明けの頃は雲ひとつない空に肩透かしを食らったが、太陽が昇るに連れて鱗雲が現れ、朝日に照らされて淡く金色を帯びる。


汽水湖の穏やかな水面に係留された小舟と、ゆっくり流れゆく雲。朝の光は少しずつ漁港を包み込み、眠っていた風景を静かに目覚めさせてゆく。誰もいない岩子漁港には、朝だけが持つ穏やかな時間が流れていた。


続いて南相馬市鹿島区南海老字竹ノ内前にある万葉の里風力発電所へ向かう。時期的に太陽が画角内へ入る頃となり、今回はロケハンも兼ねての撮影。今回は矢印のブレードは停止していたが、風向きも良く各ブレードは此方側を向いており、構図としては悪くなかった。


「鏡祭月の静奏」~ F14・SS1/1000・ISO200 ~


田園地帯の先に並ぶ風力発電群は、この地を訪れる度に気になる存在だが、季節によって太陽との位置関係も少しずつ変化してゆく。「空も静かに流る頃」を撮ってから四十分ほどが経過したが、鱗雲はなお東の空に広がり続け、秋の朝らしい表情を添えてくれた。


度々書いていることだが、風力発電施設を撮る際はブレードの位置に気を配っている。ブレードがタワー上でY字に重ならないようタイミングを見計らうのだが、停止していた最奥の一基を除き、三基のブレードは偶然にもほぼ同じ位置に揃った。


万葉の里風力発電所を後にし、いつものようにいわき方面へ向かう。日中に撮影を行うつもりはないため、あちこちに車を停めながら時間を過ごす。夏は暑くてその時間を過ごすが大変だが、この日は晴れてはいるものの風は冷たく、日向に車を停めていても苦にならなかった。


やがて夕刻が近づき、画像のいわき市薄磯一丁目の薄磯海岸へ向かう。空模様に大きな変化は見られなかったが、とりあえず機材を準備しながら海の様子を眺めることにした。


「俺の裡で鳴り止まぬ詩(もの) #1」~ F10・SS13・ISO200・ND100+ND400 ~


「俺の裡で鳴り止まぬ詩(もの) #2」~ F10・SS30・ISO160・C-PL+ND100 ~


当日の日の入りは16:59。そして#1の撮影時刻は16:02。明るい時間なのでND100とND400を併用して画作りを行った。長露光では明暗差が強調され、夕刻へ向かう空は実際以上に赤味を帯びて見える。また、この時間帯はまだ海岸で遊ぶ人の姿も多く、それらを消去する目的もある。露光時間は計算で求めるものの、撮っては確認を繰り返し微調整する。


#2の撮影時刻は日の入りと同じ16:59。海へ流れ出る排水路の位置が、いつもとは変わっていた。よく見ると以前の流路は砂に埋まり、新たな流れが生まれたようである。私としては以前の形状の方が好みだったのだが、自然が相手では致し方ない。露光時間は30秒とし、明暗はISO感度で調整した。


日没を迎えると、岬の灯台に明かりが燈る。何カットかその様子を撮影したものの、やがて満潮の時間が迫り始め、海岸をゆっくりと後にした。夕闇迫る海岸からは人影も消え、答えのない質問を吹く風に問い掛ける。だが、その詩はまだ鳴り止むことがなかった。


「私は夜に海をみる」~ F8・SS348.7・ISO200 ~


最後は海岸から上がり、船舶の光跡を撮る。以前は定期的に撮っていた内容になるが、久しぶりでありタイトルも踏襲する。当然ながら暗くなればファインダー越しには何も見えず、岩礁とほぼ同じ距離になると思われる街灯にピント合わせながら、画角・構図などを調整する。


沖を往来する船舶は一隻とは限らず、複数だったり左右から交差することもある。船舶が重なると光跡は乱れ美しない。従って船舶の動きに視線を注ぐことになるが、久しぶりだとその見極めや感覚が覚束ない、加えて船舶は頻繁に往来する訳ではなく、更には撮影に時間が掛かるので、この日は三枚を撮ったところで切り上げることにした。


さて夜明け前の岩子漁港では期待した朝焼けにはならなかったものの、その後は鱗雲が現れ、万葉の里風力発電所の上空を彩り、穏やかな秋の空を見せてくれた。自然を相手にしていると、ほんの少しの時間差で景色が大きく変わることを改めて思い知らされる。夕刻は薄磯へ移動し、久々となる長時間露光や船舶の光跡を撮影したが、かつては繰り返し撮っていた題材も、しばらく間が空くと感覚が鈍っていることに気付かされる。


結果として期待した朝焼けには出会えなかったものの、鱗雲の朝、穏やかな夕刻の海岸、そして夜の船舶光跡と、一日を通して様々な表情を見ることができた。冷たい潮風や短くなった日脚に季節の移ろいを感じながら、自分也に収穫のある一日となった。


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