南相馬市原町区「えぞ龍」
JR常磐線、原ノ町駅の裏手通りに店を構える「えぞ龍」を初訪問する。南相馬市で長く親しまれているラーメン店であり、その存在は以前から知っていたものの、訪れる機会に恵まれず、今回ようやく暖簾をくぐることができた。

店構えは昔ながらのラーメン店らしいこぢんまりとした佇まい。白い外壁に赤い看板がどこか懐かしさを覚える。駐車場は六台ほどでいっぱいになるが、それがかえって昔ながらの町のラーメン店らしい親しみやすさを感じさせた。



メニュー表はなく、注文は壁に掲げられた品書きを見て行うスタイル。味噌、醤油、塩の三種に加え、みそカレーらーめん、ネギらーめんなどが並ぶ。サイドメニューは餃子が用意されている程度で、内容は比較的シンプルだ。
方や目を引いたのはトッピング類の価格設定。麺大盛りをはじめ、もやし大盛り、白髪ネギ大盛り、コーン、バターなどがいずれも330円で統一されていた。昨今の物価高を考慮してもやや強気な印象を受けたが、その分、具材の量や満足感に期待が膨らむところでもある。

店内は四人掛けテーブル三卓とカウンター八席。外観の素朴な佇まいとは対照的に、内装は明るく整えられており、思いのほかモダンな印象を受けた。厨房とホールは老夫婦二人で切り盛りされているようだ。個人経営の店では後継者不足による閉店も珍しくなく、こうした店が少しでも長く営業を続けてくれることを願いたい。

みそらーめん @990円+大盛り @330円
先週は相馬市の「麺屋 楽笑」でも食べたが、矢張り相馬に来れば選ぶのは味噌ラーメン一択だ。先述した少々高めの大盛り料金も含め、期待を抱きながら待っていた一杯は、もやしとメンマ、チャーシューが載る、実にオーソドックスな味噌ラーメンといったビジュアル。
“三種類の味噌と40種類のスパイスを使い、三ヶ月熟成させた味噌を使用しています”
と、店内には味噌への拘りが掲げられており、尚更期待しながらスープを一口啜る。すると味噌の風味よりも先に、ほんのりとした甘さが舌に残った。もしかするとバターがスープに少々溶け込んでいるのだろうか、個人的に味噌とバターの組み合わせは好みではないのだが、食べ進めるに連れて味噌の風味が次第に前面へ現れ、しっかりした塩気と意外なほどのあっさり感が同居する味わいへと変化していった。

麺はやや硬めに茹でられた黄色い中太麺。シコシコとした歯応えが心地よく、スープとの絡みも悪くない。何度も触れるようだが、大盛り330円という価格から想像するほどの増量感はなく、1.5玉程度といった印象だった。チャーシューは今風のとろけるようなタイプではない。しっかりとした肉質を残した昔ながらの仕上がりで、子供の頃に食べたラーメンを思い出させる懐かしい味わいだった。
スープの塩気については「麺屋 楽笑」と同様、福島生まれの私には、味噌ラーメンは多少ガツンと来るくらいがちょうど良い。反対に、甘さが前面に出る輪郭の定まらない味噌ラーメンは、どうしても好みから外れてしまうのである。

テーブルには辛子味噌とおろしニンニクなどが用意されており、店の方からは辛子味噌を勧められたが、私は迷わずニンニクを選択。途中で少量加えてみるとスープに力強さが増す。
食べ終えての感想を忖度なく述べれば、味そのものは決して悪くない。むしろ昔ながらの相馬味噌ラーメンとして十分に満足できる一杯だった。ただ、どうしても気になったのは価格である。特に量を重視する私としてはコスパの面で厳しい評価にならざるを得ない。
一方、店内では馴染み客と思しき人々の姿が目についた。店主が「いつもの?」と声を掛けたり、同行した若い男性にヤングらーめんを食べさせようと注文する年配客がいたりと、地元に根付いた店ならではの光景が見られた。味や価格に対する評価は人それぞれだろう。しかし、こうしたやり取りを目にすると、「えぞ龍」が長年に渡って地域の人々に愛され続けてきた理由が、少し分かったような気がした。
南相馬市原町区錦町1-49 月・火・水曜定休