只見線、冷雨に烟る六十里越

M.Hermitage

24日(土)、只見町の六十里越の紅葉、そろそろ見頃かと足を運ぶ。天気は曇りのち雨の予報だが、個人的には強い陽光に照らされるより、しっとりと雨に濡れ、どこか落ち着いた山々の紅葉もまた風情があり、そんな景観が好みだ。

その前に大沼郡三島町早戸の早戸駅にて、05:50発の上り422Dを撮影する。冬の雪景色に向けた構図確認も兼ねていたが、この時点では六十里越での撮影時間を勘違いしていることにまだ気付いていなかった。尚、早戸周辺の紅葉はまだまだこれからといった様子だった。

早戸駅から南会津郡只見町大字田子倉の只見沢橋梁、六十里越トンネルへ向かうが、その道中で通過時間を見誤っていたことに気付く。車両は06:48通過の上り426D。何とか通過直前に滑り込んだものの、構図や露出を調整しきれないまま車両が通過し、車体には被写体ブレが生じる。薄っすらとかかる山霧の景観が素晴らしかっただけに、悔いが残る。次の便までは時間があるため、仕切り直すべく一旦只見町内へ戻ることにした。

町内に戻り、南会津郡只見町大字蒲生字山下からの第八只見川橋梁俯瞰ポイントへ向かう。田子倉周辺に比べれば色付き具合はまだ控えめだが、小雨模様によるフラットで影が生じない景観が心地良かった。


「霎時施」~ F10・SS1/160・ISO320 ~


車両は08:52通過の下り423D。小雨は降ったり止んだりを繰り返している。小雨とはいえ、降れば川面を叩いて橋梁の写り込みや水面を乱してしまうため、「通過時には止んでくれ」と願ったところ、その願いはどうにか叶ったようだ。此処からの撮影は画角をどうするか、寄るか引くかを毎回悩む。今回は色付いた山々を取り込むため、引いた構図を選択した。


度々書いているが、一昨年、此処で熊と遭遇した。そのため熊鈴やホイッスルなどの携帯は当然ながら、山中に到着した際は車のクラクションを盛大に鳴らしている。また待機中も、些細な物音に注意しながら常に周囲を見渡すように心掛けている。


423Dを追うように再び只見沢橋梁へ向かう。列車は途中の只見駅での停車時間があり、今回は十分に余裕がある。残念ながら彼方の山霧は消えてしまったが、時間に追われることなく、フラットな光の中でじっくりと撮影に集中できる状況はとても有り難い。


「国境のもみじ土産に六十里」~ F10・SS1/200・ISO400 ~


車両は09:40通過の下り423D。只見沢橋梁を渡った列車は、全長6.359mの六十里越トンネルへと吸い込まれるように姿を消して行く。ここから県境のサミットへ向け、ジーゼルエンジンは唸りを上げながら約六分間の闇の道へと挑む。


直前まで車窓いっぱいに広がっていた田子倉湖周辺の鮮やかな秋色。しっとりと濡れる山肌の見事な紅葉を目にした乗客たちは、暗いトンネルに入った今もなお、その感動の余韻の中で旅の会話に花を咲かせているのだろう‥と、静けさを取り戻した山々の中、ファインダー越しに去りゆく列車を見送りながら、そんな車内の温かな情景に思いを馳せた。


423D通過後、この区間の次便は14:00過ぎとなり再び山を下りる。時間があるので10年以上ぶりに南会津町の屏風岩へ向かうことにしたが、次第に雨が本降りとなってきた。屏風岩は岩上からの撮影になるため、雨に濡れると足元が危うい。そこで途中の大桃の舞台に立ち寄ってみたところ、画像のように改修工事が行われており、車から降りることなく引き返す。

三度、田子倉へと向かう。今度は余韻沢橋梁を正面から捉える構図だが、雨は止むことなく降り続き、雨具をしっかりと身にまとっての撮影となった。ただ、雨は降っているものの朝から極端な寒さは感じられず、身体への負担が少なかったのは幸いだった。


「雪降れば越すに越されぬ六十里」~ F8・SS1/160・ISO500 ~


車両は14:15通過の上り430D。思い起こすと、田子倉周辺で紅葉を撮影するのは数年ぶりのことだ。余韻沢橋梁はこれまで縦構図で撮ることがが多かったが、今回は左側の樹木を取り入れた横構図を選択してみた。スノーシェッド付近に茂る木々は、確か色付くこともなく葉を落としてしまう種類だったなと、ふとそんな記憶が蘇る。


11/04には冬季通行止めとなる六十里越。その長い冬の期間、人と人を繋ぐ唯一の交通手段は只見線だけになる。撮影を終え、名残惜しさを感じながら山を下る道中、雨に濡れた山々は振り返る度に秋が深化して行くかのように見えた。


「蚯蚓鳴く」~ F8・SS1/160・ISO500 ~


南会津郡只見町大字叶津字下稲田の叶津川橋梁では、先程の上り430Dが14:39に通過して行った。動画の準備は間に合わず、且つ手持ちでの撮影となった。


つい先日まで青々とした山々と黄金色の稲穂が広がっていた田んぼは、冷たい秋の雨に濡れ、虫の音も耳に届かない。季節は移ろい、夜ともなれば刈り取りを終えた田んぼの地中から、ジーっとミミズの鳴き声が聞こえるかのような、そんな寂寥感が募る季節へと変わってきた。


90分ほど待てば次の下り列車がやって来るが、一日を通して雨の中に身を置いていたせいか、思いのほか疲労感が残り、深追いせずに帰路に就くことにした。


早朝の早戸駅から始まり、時刻を勘違いした只見沢橋梁の始発便、雨の日のしっとりとした情景となった第八只見川橋梁、そして秋色の深まりを感じさせた余韻沢橋梁や叶津川橋梁。雨に濡れ刻一刻と表情を変える奥会津の秋は、静かでどこか愛おしい風情に満ちていた。


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