天地始粛、秋雨のたかつえそば畑

M.Hermitage

29日(土)、晩夏に訪れている南会津郡南会津町高杖原のたかつえそば畑。今年も良い頃になったと耳にし週末の撮影を予定していたが、残念なことにこの日はあいにくの雨。とは云え雨は雨なりの景観もあり、行き先を変更せずに出掛ける。道中の気温は低く、車内の外気温計は所々で16℃を示し、プチ暖房を入れるほどの肌寒さだった。

雨ということもあり人出は少なかった。日の出は望めないため、今回は東側からの撮影に絞ることにした。因みにその東側の駐車場も、先に停まっていた車は二台だけだった。


下画像は私的な定番構図。背後から太陽が昇ると、そば畑はスポットのように照らされ、背景の山々は淡く朝焼けを帯びる。併し今日は雨。立ち位置や視点を少し変えながら、雨の光が創る僅かな揺らぎを探してみることにした。


「天地始粛 #1」~ F10・SS1/5・ISO200 ~


「天地始粛 #2」~ F10・SS1/5・ISO200 ~


天地始粛(てんちはじめてさむし)。天気図には秋雨前線が現れ、夏の終わりの冷ややかな空気に、季節の移ろいを肌で覚える。“粛”には鎮まる・弱まるの意があり、夏の気が落ち着き、万物が改まる頃とされ、少しずつ秋の気配が立ち上がってくる時期でもある。


高杖のソバ畑の光景に出会うと、何故かEaglesの「The Last Resort」がふと頭を過る。この曲に於ける“Resort”は、一般的なイメージと意味合いが異なる掛け言葉になっており、楽曲が持つ内省的な響き、そして夏の終わりに漂う冷ややかな空気感がソバ畑の風景と重なる。


「暁 靄」~ F10・SS1/30・ISO200 ~


その後、景観に大きな変化はなく、次の目的地へ向かおうかと車へ戻る途中でふと後ろを振り返った。すると視界の左側に霧が流れ始めているのが見え、再び三脚をセットし直すことにした。霧だけでは景が曖昧になり、何処かに重心が必要となる。そこで「天地始粛 #2」の左端にあった葉の落ちた木を画面の目標物として置いてみた。


霧の流れは早く、時折り木の輪郭を薄く覆い、また離れて行く。その僅かな揺らぎが、朝の気配をひとつの層として見せてくれるように思えた。


所で昔々のソバ畑と云えば強い堆肥臭だった。遠くからでも気付くほどで、それは家々の周囲にソバ畑が置かれなかった理由のひとつでもある。調べてみると、ソバの臭いには「花そのものの臭い」と「使われていた肥料によるもの」があったようだ。


今はその臭いを殆ど感じなくなった。その理由として、未発酵の堆肥から化学肥料・完熟堆肥への移行。またソバの花は自力で受粉しにくく、昆虫を引き寄せるために独特の臭いを発していたが、この肥料の改善により、鼻を近付けないと分からないほどの程度になっている。


さて雨が降っていなければ、ソバの花に近付いての撮影など試したいことが幾つかあったのだが、先述した次の目的地=只見町へ向かうことにした。毎年のことだが、たかつえそば畑を撮る頃になると只見川の川霧は終わりに近く、この日は雨による山霧を目当てに車を進めた。


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