只見線、夏の余白を歩く
22日(土)、度々書いているが今夏は本当に雨が多い。それは時間を問わず、昔で云う夕立ちをもっと強くしたような降り方をする。その影響もあってか、私の住むところに於いてはこの数年の暑い夏とは異なり、湿度感はあるが過ごし易い日が多い。特にお盆過ぎてからは朝夕涼しく、扇風機を使う夜は無くなった。
さて週末の撮影だが、行き先を決めぬまま車に乗り込めば、習慣とは恐ろしいもので、自然と足は奥会津へ向かっていた。日はだいぶ短くなり、川面に霧が漂っているのかどうかは確認できないが、道路上の所々には流れており、おそらく立っているのだろう。

そんな状況の中、二週に渡りホワイトアウトで撮影できなかった、大沼郡三島町大字西方字居平からの第一只見川橋梁へ向かってみたが、今回も御覧のような状態だった。ただ前回・前々回と違い、霧はゆっくりと流れて行くようにも感じられた。

「鵺鳴く朝に」~ F8・SS1/80・ISO400 ~
車両は06:05通過の上り422D。次第に橋梁が姿を現し、居座ることにしたものの、にわか雨が降り出した。杉林に立っているので雨具がなくても濡れるような降り方ではないが、それに呼応するかように霧が景観を遮り、列車の通過時間が迫ってきた。
霧は橋梁を覆い、どうにか形にはなった‥と、いったところか。列車の通過速度が遅く、それを確認してからSSを変更した。この場所での撮影の度に書いていることだが、今朝もトラツグミの声が遠くに近くに響いていた。古くはその鳴き声が妖怪の声とされ、サルの顔にトラやタヌキ、ヘビの体が合わさった姿の妖怪「鵺」の字がトラツグミに当てられたという。

続いて久しぶりに大沼郡金山町大字川口字堰口、尻吹峠からの大志集落を望む。現着時はホワイトアウト状態だったが、次第に集落が姿を現す。併し此処では列車通過に合わせるかのように雨が降り、424Dと423Dは霧の中に音だけを見送ることになった。

「過ぎ行く夏の片隅にて」~ F10・SS1/400・ISO200 ~
車両は08:43通過の上り426D。撮影場所を移動しようかとも思ったが、撮れないなら撮れないでも構わないとその場に留まる。やがて視界は徐々に開けてきたものの、川霧はもう消えてしまったようだった。そして薄っすらと残る山霧で集落脇の線路は見通しが芳しくなく、急遽構図を変え右下を通過する車両を撮ることにした。
午前中は下り便がもう一本あるのだが、撮影を終え秋に向けてのロケハンと休息に入ることにした。霧の名残が山肌に薄く貼りつき、川面の気配も既に落ち着いている。夏の終わりを告げるような静けさが漂い、歩く度に草の匂いが幽かに立ち上がる。

午後は大沼郡金山町大字本名字下村から始める。周辺と比べこの一帯の田んぼは色付きが早く、毎年八月末から九月初めには稲刈りが行われている。夕刻にこの橋梁を撮ることもあり、その際は左側の杉林付近に立っている。

「落ツ蝉鳴ク」~ F10・SS1/250・ISO200 ~
車両は15:20通過の上り430D。暑かった夏は徐々に過ぎ、午後の光はやや柔らかく、何処か余所余所しい蝉の声が途切れ途切れに響く。夏の名残りが僅かに漂う中、橋梁の濃い赤が控えめに浮かび上がり、列車の通過を待ちながら、季節の境目に立っていることをふと意識する。

430D通過から十五分程でやってくる下り427Dをどこで撮るか。今の時期は思い描くような内容にならないことは分かっていたが、大沼郡金山町大字西谷字白沢口からの第六只見川橋梁を撮ることにした。車両は15:36通過。2022年の再開通で上路ワーレントラス構成となり、列車を置くポイントが難しくなったものの、田んぼや背景の山々が色付く頃にまた来たい。

夕刻には早くから各地で川霧が漂い始めた。第七只見川橋梁も良いのではと車を進めたが、日が傾き始めた大沼郡金山町大字横田字上積田周辺の美しさが目に留まり、この地で撮影することにした。とは云え、集落の左側奥は今程の第七只見川橋梁になり、霧が立ち上っている様子にドラえもんの「どこでもドア」があれば‥と、思わずにはいられなかった。

「落夏の様相」~ F8・SS1/200・ISO500 ~
車両は18:28通過の上り434D。通過の頃には日が落ち、背景との明暗差が大きくなる。線路沿いには多くの標識が立っており、車両の先頭部分に被らない位置で撮りたいのだが、暗くてその様子が把握出来ず、車両の位置は兎も角、数枚の中から標識が被っていない画像を選ぶ。
列車の通過前、頭上には鱗雲が浮かび、秋の気配が滲んでいた。山肌には薄い霧が寄り添い、集落の奥へと流れて行く。季節がひとつ終わりに向かうその境目に立ちながら、ただその場の呼吸と鉄路の鼓動に身を置いていた。

最後は大沼郡金山町大字滝沢字下林、四季彩橋からの第七只見川橋梁。すっかり闇に包まれ、往来する車もない。地元の方に由れば、撮影の度に水を汲む熊野神社がある線路沿いの道路だが、夜になると熊の通り道になるという。
車両は19:26通過の下り431D。当初は川霧に浮かぶ列車を思い描いていたが、闇の深まりとともに動きのある内容にしてみることにした。列車の音が遠くで立ち上がり、やがて闇の中を滑るように現れては、橋梁の構造を一瞬だけ照らし、直ぐに消えていった。夜の只見川沿いは、昼間とはまるで別の表情を見せ、季節の境目に立つような静けさが残った。
さて今年の夏は川霧の発生が多く見られた。この数年は極端な猛暑が続き、水温と気温の差が殆ど生じず霧の立つ条件が整わなかった。併し今夏は、只見線が運転見合わせになるほどの大雨が何度か降り、大地に冷気が蓄えられたのだろうか、奥会津らしい夏を取り戻し川霧の立ち易い日が続いたように思う。
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