雨の只見線、気配を拾う一日
29日(土)、たかつえそば畑を後にして只見町へ向かった。南会津郡只見町大字蒲生字山下、第八只見川橋梁の俯瞰ポイントを目指していたのだが、そば畑を06:00に出発した時点で、どうにも通過時刻には間に合いそうになかった。

そこで判断を切り替え、南会津郡只見町大字叶津字下稲田の叶津川橋梁へ廻ってみると、色付き始めた田んぼと山霧の気配が目に留まり、此処で撮ることに決めた。

「渡りゆく気配」~ F8・SS1/125・ISO500 ~
車両は07:16通過の上り426D。雨の中で準備を始めて間もなく、左手から列車のスキール音が聞こえてきた。構図をもう少し追及したかったため、橋梁へ差し掛かってからも画角やピント位置に手を加える。
時折り撮影記にも書いているが、私的に只見線の撮影は薄曇りなどのフラットな光線を好む。大雨は別儀としても、雨は雨で薄光の滲み具合や山霧の流れが景観を柔らかくし、今回もその気配が静かに満ちていた。

続いて目的であった第八只見川橋梁へ向かう。到着時には山霧が良い具合に流れていたが、次第に見通しの効く景観へと変わっていった。この日は土曜日であったが、J-POWERの浚渫船やボートが川面を忙しく行き交っていた。

「夏過ケル」~ F10・SS1/160・ISO320 ~
車両は08:54通過の下り423D。夏休み期間なので二連運行かと予想していたが、通常の単行となっていた。霧はほぼ消えてしまったものの、返す返す雨模様の薄光の下で落ち着いた質感の一枚となった。もし夏の太陽が射していたら、ギラついてこうは行かなかったと思う。
一昨年、この地で熊と近距離で遭遇した。被害は無かったが距離が近かったためか、此処に来る度に周囲の気配が気になる。現着時には車のクラクションを数度鳴らし、音量の大きいホイッスルを吹きながら立ち位置へ向かう。併し雨音はすべての気配を消してしまい、尚のこと気を配りながらの撮影となった。

午後は会津川口駅発の上り列車を撮るため柳津町周辺を巡り、河沼郡柳津町大字柳津字上村道上乙に落ち着いた。雨は途切れる気配がなく、時折り小雨へと変わるものの、撮影には雨具が欠かせなかった。田んぼの色付き具合は場所毎に異なる。この地の稲穂は首を垂れているが、黄金色の田んぼが広がるのは、もう少し先のことだろう。

「そっと秋がちかづくようだ...」~ F10・SS1/250・ISO400 ~
車両は13:18通過の上り428D。会津川口駅で上り側がキハ110の首都圏色車両であることを確認し、田んぼの色合いと赤い車両を合わせたくてこの場所を選んだ。田んぼ以外には各橋梁という選択肢もあったが、どうにも心がそちらへ向かなかった。赤い車両が稲の気配に映え、タイトルのようにそっと秋の足音が聞こえて来るようだった。

金山町横田方面へ戻る。雨の中で何処を撮るか、車中から景色を眺めていると、大沼郡金山町大字横田字上山根、第七只見川橋梁正面が目に飛び込む。此処から撮ったのはいつだったか、普段は通り過ぎるだけの場所だが、雨の様相には心惹かれるものがあった。

「秋霖滲む鋼の旋律」~ F10・SS1/125・ISO250 ~
車両は15:02通過の上り430D。背景、特に空を排したフレーミングとし、橋梁の質感を捉えたかったのだが、雨により全体がソフトな印象となった。それが良い悪いという話しではなく、雨や霧の中では鮮鋭な描写にはならない。つまり、この日撮った画像は全てその気配に包まれているが、個人的には自然が成す“ボカシ加工”のように思っている。
所でこの430DはキハE120の国鉄色、「そっと秋がちかづくようだ...」はキハ110の首都圏色、そして「渡りゆく気配」ではキハ110の東北色と、遅出の撮影だったにも関わらず、全てのラッピング車両が目の前を通り過ぎ、雨の中に色の巡り合わせが揃った。

430Dから約50分後、15:54通過の下り427Dを大沼郡金山町大字横田字山根で撮った。もっと田んぼへ寄りたい気持ちはあったが、そこは狭く、加えて電気柵が設置されているため、思う構図にはならなかった。更に雨の中での撮影がこの地に向いていないのか、全体が沈んだような色調となり、また別の日に撮り直したい気持ちが残った。
降り続く雨と、次第に暗さを増していく夕刻。この日は撮影を切り上げ、久しぶりに明るい内に帰路へ着いた。その途中でふと気付いたのだが、朝から鳥の囀りも蝉の鳴き声も耳に届かない。秋の虫の音さえなく、そこに生き物がいる気配そのものがすっかり消えてしまったように、自然までもがじっと息を潜め、冷たい雨と急激な気温の変化の中で、ただこの一日が過ぎ去るのを待っている。そんな妙に静かな時間が流れていた。
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