只見線、霧の間を往く日
25日(土)、暑い日が続いていたものの、福島県はまだ梅雨明けとはならず、そのことを思い出させるように週末からは雨が続き、気温はぐっと下がった。気温は下がったが湿度は高く、更には昨夜からの雨がまだ残る状況に、この日も只見川の川霧を期待し夜更けに出掛けた。
川霧は期待したように、柳津町から第七只見川橋梁付近まで山霧と相俟って立ち上がっていた。併し第七只見川橋梁から先の只見方面は前日の雨で川が濁り、川霧は立っていなかった。

各橋梁を見て回ったところ、先述したように山霧が盛大に立ち、俯瞰ポイントではホワイトアウトになる可能性が高かった。そのため、目線が同じ大沼郡三島町大字名入字上居平から第二只見川橋梁を撮ることにしたが、近距離からでも橋梁が霧に覆われてしまうため、立ち位置を第二野沢街道踏切へと変更し、向かって来る列車正面を撮ることにした。

「黎明ヲ渡ル」~ F10・SS1/320・ISO500 ~
車両は06:02通過の上り422D。イメージとしては、霧の中から列車が浮かび上がる姿を思い描いていたものの、あれほど橋梁を覆っていた川霧は通過前に流れてしまった。それでも薄く残った霧の中に、前照灯が光球となって姿を現した。
それにしてもいつものことながら、刻々と変化する川霧と写り込みの撮影は難易度が高い。風景写真のように「今この時」と思った瞬間に撮れれば苦労はないが、鉄道の場合、その瞬間に列車が来なければ、それこそ「後の祭り」となってしまう。

強弱のある雨は降ったり止んだりを繰り返し、次便は最近撮影が続く第五只見川橋梁を考えたが、行ってみるとメンテなのか修復なのか、主桁の約半分が隠れていたため、大沼郡金山町大字川口字中山のかねやまふれあい広場から大志集落を眺めることにした。

「朝は川より来る」 ~ F10・SS1/400・ISO200 ~
此処で三脚を使って撮るのは久しぶりだと思う。集落が霧に包まれる景観も良いが、私的にはこれくらいの状況が好みだったりする。只見川沿いの国道252号線は、所々で川霧が上陸し視界を遮っていたが、この時期、奥会津の朝は流れるように川からやって来るのかも知れない。もう少し霧が流れてくるのを待っても良いが、次便の撮影を優先しこの地を後にした。

次便は大沼郡金山町大字滝沢字下中山、二本木橋上からの第七只見川橋梁とした。到着時は画像のように見通しが効かない状況だった。次第に視界は改善するものの、降ったり止んだりする雨に呼応するかのように橋梁は霧に隠れ、列車通過の時間となった。

「土潤溽暑」 ~ F8・SS1/250・ISO200 ~
車両は07:42通過の上り426D。定時の通過は07:36頃だが、その時間帯は完全なホワイトアウト状態だった。つまり遅れての通過で撮れた一枚であり、前出したように刻々と変化する川霧は気が揉める撮影が続き、暑さも伴って妙に疲れることが多い。
また列車通過時の川霧の状況により構図を変えることもあるが、この状態であれば左側の比率をもう少し多くしても良かったかも知れない。湿度は高く、先週の撮影記でも触れたようにレンズのズームリングさえ重く感じる。その湿度に乗じて体感温度も上がり、涼しげな画像ではあるが、七十二候のタイトル通りの気候だった。


午前中は、上画像の大沼郡金山町大字横田字上積田で08:41通過の下り423Dを撮影。続いて、下画像は同町水沼字沢西からの第四只見川橋梁にて、09:33通過の下り425Dを撮った。併し空模様は今ひとつで構図も平凡となり、どちらも凡庸な内容に終わってしまった。
因みに霧幻峡から第四只見川橋梁間の川霧は昼前まで立っていたが、天気予報に反し次第に太陽が顔を出し、湿度と暑さが混じる状態に撮影意欲は失せ、夕刻まで涼しい場所で過ごした。

蜩が鳴き始める頃に活動を再開。川霧の状況を確認し、大沼郡金山町大字水沼字大道の高倉スノーシェッド内から霧幻峡方面を撮ることにした。画像は18:34通過の下り431D。この立ち位置からだと車両下部が線路沿いの雑草に隠れてしまうため、次便は2mほど左へ寄り、細越拱橋を取り込むことにした。

「夜へ還る」 ~ F2.8・SS1/200・ISO1000・2 Composite Photo ~
車両は19:24通過の上り434D。これも先週の撮影記で書いたように、夏至から一ヶ月が過ぎ、日の入りが約10分ほど早くなった。それは些細な変化かも知れないが、撮影する側にとっては大きな時間差となり、今回は初めから合成を前提にして撮影を行う。
予め川霧や雲の様子が良いものを数枚撮っておき、車両通過時もその際と同じ露出で撮影した。今回の合成は比較明合成フリーソフト「Sirius Comp」を使用する。旧いソフトながら操作感は良く、特に不満はない。薄闇の中で川霧が静かに立ち上がり、夕刻の光は淡く、列車の灯りがその気配を僅かに照らす。そして気付けば431D通過時に聞こえていた蜩の声がほどけるように消え、代わりに夜の虫の気配が滲み始めていた。
梅雨明けを待つ奥会津は、湿度と雨と川霧が入り混じり、季節の境目ならではの不安定さを見せていた。その揺らぎは撮影の難しさにも直結するが、同時にこの土地らしい気配の濃さをもたらしてくれる。
川霧が立つか、流れるか、消えるか。その一瞬に賭ける撮影は、思うようにいかないことの方が多い。実際、この日の朝は何処で撮るか、身体が二つあれば良いのにと思わずにはいられなかった。それでも、だからこそ次回は‥ と、心を掴まれるのだと思う。
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