普段着の只見線

18日(金)、只見線のキハE120が運用され間もなく二年になるが、実はキハE120になってから平日上り始発の四両編成、同じく下り始発と折り返し便になる上り三便目の一両編成を未だ見たことがない。前者の四両編成はキハ40時代に何度か撮影しているが、平日の早朝ということもありなかなかお目に掛かれず、今回は金曜日の早朝から出掛けてみたのだが‥。

だいぶ日が伸びたとはいえ始発便の時間帯はまだ暗い。加えて雪が降り走行する車両を無理に撮ることはせず、一両編成と四両編成が交互に停車する河沼郡会津坂下町大字五ノ併字権現堂丙の若宮駅へ行ってみる。06:33発の下り423Dは約四分遅れと駅舎からの放送が聞こえ、やがて警報器が鳴って列車がホームに滑り込めば、それは一両じゃなく二両編成でした。


白い刻(とき)」~ F8・SS1/160・ISO500 ~


とはいえ此処での撮影目的は通学の高校生が乗車する06:47発の上り422D。若宮駅は根岸駅と同様に駅前に広場がなく、高校生を送迎する車が積雪の細い町道を行き交う。そして列車到着間近になって走ってやってくる近所の人達などなど、白い静寂の中の慌ただしさを見る。


さて遠くから近付く車両を見るとそれは四両ではなく三両編成であり、そういえば三年生は自宅学習期間になっていたと気付き、乗車人数が少ないことも理解した。因みに会津若松市内の高校に通う場合、この始発便に乗らないと遅刻になる。始発駅の会津川口からは05:32に乗らなければならず、本人もそうだが家人も三年間大変なことだとつくづく思う。ましてや雪で運転見合わせとなれば尚のこと大変です。

そんな訳でこの日の目的のひとつが無くなり、次の目的である河沼郡会津坂下町字五反田の会津坂下駅へ行く。上下便が停車し会津坂下町内の高校へ通う生徒の降車シーンを撮る予定であったが、此処でもアクシデント発生。上画像は08:25発の下り425D、通常であれば隣レーンで交換する08:21発の上り424Dが雪で不着となった。加えて若宮駅での撮影時に降っていた雪は上がり、強い陽射しに輝度差が生じ上手く行きません。また構図内には白矢印の電線が新たに引かれ、フレーミングがとても難しくなりました。


動画を撮るため三脚を二台持参など準備万端ではあったが下画像、夜明け時と全く異なる空模様の下、奥会津へ向かう425Dを見送りました。

会津坂下駅で確認すると424Dは約25分遅れとなるようだ。空は晴渡り予てより撮りたかった飯豊山を背景とする大沼郡会津美里町米田字鴨田乙の桧ノ目踏切へ行く。赤丸部は先ほど触れた根岸駅になり、風に乗って駅舎からの放送が耳に届く。


飯豊を背にし」~ F10・SS1/800・ISO200 ~


定刻であれば08:33頃の通過であるが、凡そ27分遅れとなった。踏切脇には除雪して固められた雪が山のようになりその上に三脚を立てる。つまり普段より目線は高くなっている。併し一週間前と比べ雪が降っても雪解けはだいぶ進んでいるように見えました。


続いて午前中最後の便を何処で撮るか思案、久しぶりに河沼郡会津坂下町大字気多宮字若林の塔寺駅へ向かう。塔寺駅から国道49号線までは直線で100mも離れておらず、この季節は落葉し木々の間からその国道が見えるが、春以降は森の中にある秘境駅といった佇まいになる。


2004年度の乗車人員は一日平均八人。雪が降ればJRの臨時職員が除雪を行うが、駅前にはそれ以上の多数の轍、そしてホームには新しい足跡が残り、朝夕の通学などの時間帯には送迎の車が数台来ているのかも知れない。


上画像、駅の構造が変わっており階段を登った先が駅舎になる。2002年に駅舎が改築されたが、かつての駅舎は階段の手前にあり、荷物の受け渡しなど賑やかだったと聞く。そもそも塔寺と会津坂下は越後路の宿場として発展、磐越西線が予定通り西側のコースを取っていれば現在の喜多方のような存在になっていたと思われる。


現在は単式ホーム一面一線、かつての貨物引き込み線は下画像、赤丸部分から左側に下るようだ。因みにこの駅では2012年05月14日と17日に熊が目撃され、17日深夜には保線作業員が駅のホームにいるところを目撃、早朝には運転士が線路を横断して山林に入る姿を目撃した。


木漏れ日の冬鉄路」~ F10・SS1/400・ISO200 ~


車両は09:48発の上り426D。424Dはだいぶ遅れたものの、この便は定刻で到着しました。先に国道に近いと記したが雪に埋もれた山林は静寂に包まれ、その雪が吸音効果となるのか列車が近付く気配やジョイント音が全く聞こえず、じっと耳を澄ませながら目が離せません。


当初は寄ったフレーミングで構図を整えるつもりであったが、手前の線路上の木漏れ日が良い感じだったので結局は引いた構図となりました。↓動画でご覧頂けるように車両付近が日陰となり、その周辺を中心に明暗の補正を行っています。


続いて午後からの撮影になりますが、午前中の青空は嘘のように冷たい風と氷雪が頬を叩く荒れ模様となり、数週間前から飯豊山や磐梯山を背景にと思っていたが残念です。それでも一部の望みを持って私的定番の大沼郡会津美里町米田字伍姓部へ向かう。


会津路の真天に雪ふる雨水かな ①」~ F10・SS1/500・ISO200 ~


車両は13:33頃通過の下り427D。辛うじて南西側の山々は姿を現し、雲の様も何とかなりそうです。今回は立ち位置を変え引いた構図としてみました。当然車両は小さくなるのだが、背景の空次第とでもいうのか何気に雰囲気が良いなぁ‥と、自己満気味であります。


会津路の真天に雪ふる雨水かな ②」~ F10・SS1/640・ISO100 ~


此方は424Dを撮った桧ノ目踏切周辺。 車両は上り428D、定刻なら13:59頃通過となるが、再度424Dに続き28分程の遅れとなった。特にこれといった内容ではないけれど、降ったり止んだりの雪模様の中、雲間から射し込む陽光が積もった雪に面白い影を落とす。


話しは変わり只見線撮影ポイントといえば各橋梁。確かに新緑に夏の川霧、そして紅葉に雪景色と四季を通じ美しい景観でありこれからも撮り続けるだろう。併しそれとは別に上手く表現出来ないが、地元で生活する人や利用する人の目線になって眺める・撮る景観もあると思う。


その一環として只見線の撮影に限ったことではないが、なるべく地元の方々と話しをするように心掛けている。話し掛けられた人は迷惑この上ないかも知れないが、それらは撮影のヒントとなり新たなイメージが膨らむこともある。今回の撮影はほぼ会津盆地で行った次第だが、各橋梁とは異なりそこに住む人々の声が聞こえ姿が見えてくるような、生活圏の中に於ける只見線の魅力があります。


@写真タイトルをクリックするとフォト蔵の大きい画像(別タブ)が開きます。