只見線、朝冷と午後の陽炎

M.Hermitage

16日(土)、週末は県内でも30℃に達する地点があるという。それでも、日が昇る前の奥会津はひんやりと冷え、厚手のジャンパーを着込んでの撮影になるが、奥会津の夏の朝らしい山霧が棚引く景観を前にすると、撮影意欲は静かに高鳴る。


Innocent Moment」~ F3.7・SS1/60・ISO250 ~


会津川口駅で夜間滞泊している始発と二便目の車両確認を行った後、大沼郡金山町大字大志字掛橋にある大志集落を眺めてみた。先に山霧が棚引くと記したが、その様子の何と美しいことか。川霧の大志集落も良いけれど、背景の山々が霧に隠れ、静まり返った川面に息を呑む。


絞り値が不思議に思われるかも知れないが、この画像はコンデジで撮ったものだ。デジイチでも撮影したのだが、最初に“佳い”と感じて撮ったコンデジの方が、結果として優れていた。


続いて久しぶりに大沼郡金山町大字水沼字赤沢、水沼橋上から第四只見川橋梁を撮る。欄干の近くには山藤が咲いており、これを取り込もうとあれこれ思案したものの、橋梁まで距離があるため間合いが巧く取れそうになく、結局はいつもの立ち位置に落ち着いた。


緑陰滴ル」~ F8・SS1/160・ISO400 ~


車両は05:41頃通過の上り422D。以前は定期的に撮っていたのだが、久しぶりに立つと景色との距離感を忘れてしまったのか、寄るか引くかその塩梅に悩む。


この地を選んだのには理由があり、山霧に阻まれ、朝陽が射さないウェットな色彩に、始発便のキハE120二連のカラーリングが似合うと判断したからだ。そして木々の葉から朝露の雫が川面へ落ちる音さえ聞こえてきそうな、そんな静かで冷ややかな初夏の朝だった。


次の車両は大沼郡金山町大字中川字荻付、昨秋開通した町道からの会津中川駅。繰り返すが陽光射す前はギラつくこともなく、静けさの残る田舎の風景が広がる。ご覧のように奥会津の田んぼは水が入ったところ、まだこれからのところと進捗はまちまちだった。


朝の駅影」~ F10・SS1/320・ISO200 ~


車両は07:10頃通過の上り424D。水の入った田んぼをフレーミングすると縦構図が適していた。その状態から写り込みは難しいが、やって来るのは単行車両なので、一部がホームに隠れることもなく、内容的にも良かったと思う。


二便目とは云え週末の集落は静かだった。平日であっても喧噪とは縁のない場所かも知れないが、田畑には農夫の姿が見え隠れするだけで、奥会津では時間の流れが止まっているような、そんな感覚に陥ることが度々起きる。


424D撮影後は、先々週から続く大沼郡金山町大字西谷字下川原からの第五只見川橋梁へ向かう。朝の山霧に今度こそはと期待が高まったものの、霧は次第に流れ、強い陽射しへと変わって行った。そんな状況ではあったが、取り敢えず07:58頃通過の上り426D、08:18頃通過の下り423Dを撮影。併し結果は芳しくなく、今回はそれらの画像を載せることもない。

その後、会津平へ向かう途中、会津西方駅?第三只見川橋梁間で風っこ只見線満喫号、下り9427Dを撮影したが、矢張り陽射しが面白くない。会津平では午後から、画像の大沼郡会津美里町鶴野辺杉ノ寄乙の春日神社に立つ。因みにこの頃には暑さでくらくらする程だった。


夏至ル」~ F10・SS1/500・ISO400・C-PL ~


車両は13:30頃通過の下り427D。田んぼ沿いに三脚を構えたものの、暑さで立っているのも億劫になり、日陰になる神社の鳥居下に移動する。そこからのフレーミングは上部の木々の葉が額縁構図のようになり、それらを取り込むことにした。


太陽は右上部にありC-PLを使用。効果はMAXとし、空や田んぼの色彩がくっきりと描写され、そのお陰もあり現像時の色調補正は殆ど不要だった。それにしても青木陰の居心地の良さに、暑い夏をどうやってやり過ごそうかと、今から想いを巡らせていた。


会津平では427Dの後、上り428D、風っこ只見線満喫号の上り9428Dを撮影したものの、風で田んぼの写り込みが叶わなかったり、そもそも昼過ぎの時間帯では光の条件が良くないなど、撮るには撮ったに留まる。本来は先週の撮影記で書いたように、この場所で夕刻の撮影を予定していたが、別の場所の田んぼに水が入り、その予定を変更することにした。

変更先は会津若松市北会津町西後庵の後庵踏切周辺。 此処で鶴沼川橋梁を走行する夕刻の上下四便を撮るのだが、空には雲ひとつなく、また現れそうな気配もなく、ドラマティックな夕焼けは期待出来そうになかった。

上画像は17:22頃通過の下り431D。前々から考えていた、遮断機が上がった踏切内に立ち、太陽へ向かう車両を撮るイメージを試してみた。併し思いのほか車両が遠く、望遠レンズでの撮影が前提になりそうだが、そうなると太陽をフレーミング出来なくなり、標準レンズでの縦構図が適しているのか…などなど考えが広がる。


下画像は18:46頃通過の上り433D。予想通り雲ひとつない夕焼けとなった。またこの田んぼは水嵩があり、ちょっとの風でも水面が荒れやすい。カメラを携えた二?三人が訪れていたが、その様子を見て懸念していた。後述するが確かに美しい写り込みがベストではあるものの、波立つ様子もそれはそれで良いと思う。但しこの画像はその波立ち様が収まりかけ、中途半端な内容になってしまった。


光の底」~ F10・SS1/640・ISO200 ~


車両は17:05頃通過の上り430D。太陽が傾き始める時間帯で、昼の暑さはようやく収まり、半袖に触れる風が心地良かった。盛夏であればとても直視できないような西日だが、柔らかく、そして穏やかに田んぼへ光を届けていた。


一羽の鷺が舞い降り、水面をゆっくりと歩く。併しその動きでも水面は乱れず、風に揺らぐ気配すらない程の水嵩は、静けさの底に光が沈み込んで行くような、そんな時間だった。尚、広角側で撮影しているため、仕上げの段階でアオリ補正を施している。


蛙(かわず)鳴き夜がそろりと降りてくる」~ F10・SS1/640・ISO200 ~


車両は17:58頃通過の上り432D。まるで田んぼではないかのように、流れを帯びた水面の表情が美しい。農作業を終えたのだろう、周囲からはトラクターの音が消え、代わりに蛙の声が静かに響き始める。太陽は空をゆっくりとシャンパン色に染め行き、風は清々しく、何処か懐かしい風景に、ちょっとした焦燥感と、過ぎた日々の記憶をふと想う、そんな日暮れだった。


当日の日没は18:40頃で、まだ十分に明るい時間帯である。併し写真のイメージとしては、やや暗い方はがしっくりするだろう。アンダー露出で撮ることも可能だったが、今回は適正露出で撮影し、暗めに補正している。またこの画像もアオリ補正を行っている。


撮影を終え朝の冷気と昼の暑さ、その落差に季節の移ろいを強く感じた一日だった。山霧に包まれた奥会津の静けさは、何度訪れても新鮮で、撮る度に心の何処かが澄み渡り、変わらぬ風景の中に、また新しい瞬間を探したい。


そして文中でも触れたように、来る夏の暑さにどう向き合うか、色々と考えを巡らせる。只見線の撮影はその最たるもので、本数が少ない故に日中をどう過ごすかが常に課題となる。これまでは朝から夕方まで通しで撮影することが多かったが、朝と夕方を別の日に分けるなど、方法は幾つかかあるのかも知れない。


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