北緯37度28分、東経139度39分の立春

M.Hermitage

07日(土)、この日の只見線は会津若松駅~会津川口駅間での折り返し運転となり、柳津町から先は三週間ほど足を運んでおらず、様子を見るべく向かってみる。会津平の田んぼは一部で地表が見える状態だったが、国道252号線に入った途端、世界が一変した。

国道沿いの積雪は多く、路面にも数cmの雪が積もっている。併し暗闇に目を凝らして眺めると、山々の木々に冠雪は見られなかった。この状況では各橋梁を背景にした景観は芳しくないだろうと判断し、始発便は大沼郡三島町大字早戸字小沢巻の早戸駅で撮ることにした。


そほふる雪の無人駅」~ F8・SS1/1.6・ISO200 ~


車両は同駅05:50発の上り422D。 一年前も撮り、タイトルも同じにした。週末の早戸駅、雪が降る駅舎に列車を待つ人影はなく、凍えそうな闇の中に始発便がホームに滑り込む。いつもと変わらぬ冬の朝の景観だが、何時までも変わらずにあって欲しい私的原風景の一つだ。


今回はやや寄ったフレーミングとし、左上の国道252号線、早戸温泉郷トンネルを省いてみた。車両通過の頃に降雪が弱くなり数枚からの合成を考えたが、車両や駅舎がクリアに描写されていたため、この一枚を活かすことにした。


続いて大沼郡三島町大字名入字根岸居平の会津西方駅へ向かう。駅名からこの付近は西方集落だと思われがちだが、本来の西方集落(大沼郡三島町西方居平)は駅から北に3kmほど離れている。少し不思議に感じるが、会津西方駅が開業した1941年当時、この地域は三島町ではなく西方村であったことに由来する。


北緯37度28分、東経139度39分の立春」~ F10・SS1/250・ISO320 ~


車両は07:26発の下り423D。これも昨年の今頃に撮っていた内容になる。夏季は左側の雑草や木々が蔓延り撮影が難しい場所だが、積雪がそれらをすべて覆い隠す。立春から四日ほど過ぎているが、タイトルの言葉選びについてはご容赦願いたい。 駅で除雪をしていた年配の作業員は昨年と同じ方で、「積雪15cm以上でラッセル、それ以上でロータリー車が稼働」、「雪が凍ると脱線のリスクがある」などなど、興味深い話しを伺うことができた。


通常423Dは単行運転だが、会津川口駅で折り返す充当運転のため二両編成だった。早戸駅で撮った422D共々、当日は会津若松駅と会津川口駅間をこの運用車両が往復する。


423Dの撮影後、凡そ13分後にやって来る上り列車を、大沼郡三島町大字名入字上居平の第二只見川橋梁で撮る。車両は07:39頃通過の424D。此方も二両編成の充当運転になり、この車両は夕刻に会津若松駅と会津坂下駅間を往復する。付近は雪に深く埋もれ、今だけの景観ではあるが、灰色一色の空に面白味が欠け、どこか殺風景な印象が際立つ結果となった。

午前中最後は河沼郡柳津町大字柳津字上村道上乙にて撮影するが、背景の杉林に冠雪がないとイマイチな内容。更には線路沿いのススキの有無など、秋口の撮影の方が向いているかも知れない。車両は09:34頃通過の上り426D。

午後からは河沼郡柳津町大字細八字家ノ下甲の第一八坂野踏切周辺へ。道路脇には除雪された雪が圧縮され、まるで誂えたようなお立ち台が出来上がっていた。まずは下画像、踏切沿いに立ち13:24頃通過の上り428Dを撮るが、矢張り右上の灰色の空が気になり、約35分後の下り便を待つことにした。


けふも小雪の降りしきる」~ F10・SS1/400・ISO200 ~


車両は14:02頃に通過する下り427D。本数の少ない只見線だが、それでも午前中のこの区間は二往復半、つまり五便の通過がある。一方、午後は二往復に減り、便毎の待ち時間も長くなる。夏の酷暑や冬の極寒の中、アイドリングによる冷暖房を好まない私にとって、その待機時間は暑さ寒さがひと際身に染み、さながら修行のようでもある。


先述した即席のお立ち台上から撮ってみる。露光データから現場の明るさの程度が分かるように、時折り薄っすらと青空が見え隠れする。併しながら冷たい風に乗って小雪が舞う中、眼下の雪原をキハ110がしっかりとした鼓動を残し過ぎて往く。


最後は河沼郡柳津町大字細八字大巻甲、第二旧柳津街道踏切周辺で撮影する。先の427Dが会津川口駅で折り返して来るまで約二時間半の待ち時間となる。奥会津方面へ向かえば待ち時間は短縮できるが、そこまでの気力は既に尽きていた。


零下の残光」~ F8・SS1/400・ISO250 ~


車両は16:31頃通過の上り430D。この時間になると太陽が傾き始め、空は佳い色合いになって来たが、車両通過時には雲が現れてしまった。それでも色調は残っており、その空を撮り込むことにした。足元の水溜まりは凍る寸前、風は刺すように冷たい。撮影用グローブから出した指先は氷のように悴み、カメラや三脚の操作すら儘ならない。頬は強張り、寒さに足踏みをしながら待つ中、彼方から踏切の警報音が聞こえるとホッとする。


冒頭で触れたように樹木への冠雪が無く、気付けばそれを避けるように雪原に立つ一日だった。雪原と言っても北海道のような景観とは異なるが、雪に走行音が吸い込まれる静寂。その中を遠くから静かに、力強く近付いてくる列車の姿は、何よりも頼もしく感じられた。


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