只見線、七月の朝は川霧で始まった
04日(土)、半夏生となり今年も半分が過ぎた。梅雨特有の空模様が続き、朝昼の寒暖差と湿度感に包まれる。そして七月最初の撮影も、相変わらず川霧を求めて奥会津へ向かった。始発便は先週も撮った第二只見川橋梁か、それとも第一只見川橋梁かと周辺を巡るが、気温や湿度がまだ足りないのか、生き物のように蠢く気配には至らず川面を静かに漂っていた。

結果、大沼郡三島町大字西方字居平からの第一只見川橋梁とした。暫く眺めていると、ホワイトアウトの心配はなさそうだが、車両通過の頃には霧が流れてしまいそうな気配もあった。

「あゝしづかだしづかだ」~ F8・SS1/200・ISO200 ~
車両は06:05通過の上り422D。通過の前、このタイミングで来てくれ‥と、願わずにはいられないような佳景が何度かあったが、最終的には画像のように川面へ写り込みを残す状態となった。言い換えれば川霧の濃度が薄いということだが、ホワイトアウトで全く撮れない、或いは流れて消えてしまうことを思えば、これでも十分に恵まれている。
この場所では毎回、様々な小鳥の囀りが重なり、06:00には遠くから寺の鐘が耳に届く。間も無くその静寂を揺り動かすように、山陰からゴトンゴトンと列車がゆっくりと姿を現せば、現世をふっと忘れてしまうような、短くも至福の時間が流れる。

続いて大沼郡三島町大字桑原字古和滝、旧道から宮下ダムを望む。五月末には構成がまとまらないまま撮影することになったが、今回はどうなるか‥。まずは07:31通過の上り424Dで様子見を行い、構成などの方向を探った。

「あの空はけふの暑さの所以也」~ F10・SS1/400・ISO500 ~
車両は07:41通過の下り423D。夏になると毎年撮っている場所になり、気付けば左側の樹木が年々伸び、画面へ写り込むようになった。手が届かない距離であり、届いたとしても刈れば線路へ落ちてしまう状況なので処理できずにいる。
朝の涼しさがまだ残るものの、次第に太陽が顔を出し、遠くに見える空はこの日の暑さを既に予見していたのかも知れない。そう云えば紅葉時にも撮ろうと考えていたが、昨秋は実現に至らず、今年は機会を見て訪れてみたい。

午前中の最後は、大沼郡金山町大字大栗山字上下原の下大牧集落俯瞰ポイントへ。今回は只見川を多く取り込む構成を思い描きながら訪れた。車を降りてお立ち台へ向かう山中では、ヤマドリの母衣打ちが響き渡る。初めて聞いたときは、地面を叩くようなその重低音に大型動物が近くにいるのかと驚いたものだ。

「夏風ひらける刻」~ F10・SS1/320・ISO200 ~
車両は08:55通過の上り426D。当初は集落を右下に置き、背景の山々を広くフレーミングしていたが、手前の川面に空が写り込み、列車の通過間際に立ち位置と構図を変更した。只見川を取り込むと列車は小さくなるものの、肉眼に近い構成は吹き抜ける爽風まで感じられる。またこの時間帯は陽が射すと線路付近が陰になり易いが、薄曇りのフラットな光によりその陰は生じず、見通しが良く美しい色彩と景観になったと思う。
帰宅後、中央下部の葉を除去しようとトリミングを試みたが、全体の印象が変わってしまい、そのままとした。時折りトリミングを試すことはあるものの、結果的にはファインダー越しに琴線へ触れた構図が、やはり一番しっくりくることが多い。

午後からは最近の定例になりつつある、大沼郡金山町大字横田字山根方面へ向かう。すると。線路沿いは地元の方々による草刈りが行われていた。併しながら画像の矢印部やガードレール付近は手付かずのままだったが、ただただ有り難く感謝の言葉も見つからない。


上画像、早速15:02通過の上り430Dを撮ってみたものの、光の具合がどうにも落ち着かず、雲の形も定まらない。一言でいえば映えない‥と、いったところか。下画像は紫陽花が咲く位置からの撮影。車両は15:53通過の下り427Dだが、先客がいていつもの場所には立てず、道路を大きく取り込む構成となった。
先述したように何れも光具合、構成が思うように定まらず、夕刻の撮影で会津三島駅方面へ戻ることにしたが、第五只見川橋梁などでは川霧が立つ気配はなかった。それ以前に430Dを撮った場所での暮れ泥む時間帯が気になり、再び横田へ向かうことにした。

「遠き山に日は落ちて」~ F8・SS1/500・ISO800 ~
車両は18:28通過の上り434D。430Dの画角からやや引いたフレーミングとした。その430D撮影時に、ガードレール付近の草はあらかじめ刈っておいた。列車の通過後、右側からの斜光線で周囲が独特の光に包まれたものの、タイミングが合わずに思い描いていたような夕空にはなかなか至らず、雲の形も色も決め手に欠ける。それでも山の端へ日が沈み行く夕刻の気配として受け止めたい。

日暮れ時は大沼郡三島町大字名入の第三只見川橋梁を訪れた。先月半ばの同時刻に撮った一枚に思うところがあり、その撮り直しが目的になる。列車通過の三十分前はまだまだ明るいが、日没の時間帯は想像以上に暗くなるのが早く、次第にAFが迷い始め、峡谷の奥へ沈む光を待ちながら、僅かに残る明るさの行方を探った。

「青の間にて」~ F2.8・SS1/125・ISO800 ~
車両は先の434D、通過は19:31。前回は左側の樹木が画面へ入り込み、それが撮り直しに至った理由であり、今回は立ち位置を橋梁中央付近へと変えた。ほぼ沈みかけた光を、かろうじて掬い上げるような露出設定。肉眼に近いその明るさの中、ジョイント音が峡谷に響き、列車の灯りが橋梁を渡れば、深い藍色の山影が静かに輪郭を保っていた。
さて半夏生の湿り気に包まれた奥会津は、朝の薄明から夕刻の藍まで、静けさの層がゆっくりと積み重なる一日だった。川霧は淡く漂い、季節の入口らしい控えめな気配を残していた。光は時に整い時に揺らぎ、自然の機嫌に合わせて此方の心も僅かに揺れる。
列車のジョイント音、鳥の声、寺の鐘‥それらが折り重なり、今日という一日がそっと形を成す。同じ場所でも同じ色には二度とならず、その変わり行く静けさこそが、奥会津へ向かう理由なのだ。そして季節は折り返しに向かい、また何処かの時間でこの景色に触れたくなる。
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