斑雪の山裾に春の予感を聞く
15日(日)、先週は降雪がなく、日中も比較的に穏やかな天候が続いた。もしかすると会津横田駅から第七只見川橋梁へと続く、大沼郡金山町大字横田字山根周辺の線路沿いの道路が通れるようになったのでは‥と思い、現地へ向かった。

到着してみると予想通り、画像の鉱山第二踏切や山中踏切、そして第七只見川橋梁に並ぶ四季彩橋も往来が可能となり、先々週に訪れた際の雪の山に阻まれていた光景が嘘のようである。


とはいえ、場所によっては胸元に迫るほどの雪壁が道路脇に連なっている。下画像の熊野神社も依然として厚い雪に埋もれていたが、大権現清水は汲むことはできた。この清水を口にするのは三ヶ月ぶりだろうか。冷たく澄んだ水で喉を潤しながら、この地にようやく春が巡ってきたことを肌で実感した。

最初の撮影はこの視点で行う。毎度のお馴染みの景観ながら、私にとっての只見線は会津川口から先こそが深層部とも言える場所だ。画像では線路が雪原の中を走っているように見えるが、手前の積雪箇所は田んぼや荒地であり、実際には線路よりだいぶ低い位置にある。つまりこの平坦な雪原は、積雪が残る今この時期にしか撮ることができない景観なのだ。

「春遠からじ...」~ F10・SS1/400・ISO250 ~
車両は07:37頃通過の上り426D。奥会津の天気予報は晴れ。併し実際には、小雨が降ったり止んだりの不安定な空模様だった。構図として空を広く取り込んだため、背景にドラマチックな表情を期待したが、現れたのは無機質な灰色の広がりだった。
併し敢えてこの特徴のない雪と空を逆手に取り、上下の白に挟まれた空間に家屋と列車がぽつりと浮かび上がる‥そんなイメージで画作りと現像を施した。試行錯誤の中で試したモノクロ画像も捨てがたい味わいがあり、いずれ差し替えるかもしれない。

「斑雪の山裾をゆく」~ F10・SS1/800・ISO200 ~
続いて200mほど場所を移動、会津横田駅方面を向き08:39頃通過の下り423Dを撮る。此方も手前側は田んぼであり、積雪が線路とほぼ同じ高さまで達している。先程の426D通過から約一時間が経過し、空模様はいくらか回復の兆しを見せていた。
ただこの付近の線路沿いには標識などが多く、タイミングが合わないと列車と重なってしまう。この画像も先頭車両の右側に被さってしまった。無雪期であれば田んぼの畦道に立ち、標識を避けるアングルで撮れるのだが、撮影時点で午後から再撮影しようと決める。

午後の撮影に向けて只見方面へと向かう。墓地踏切や叶津川橋梁、そして八木沢スノーシェッド周辺のロケハンを見て回るが、未だ積雪が深く徒歩での進入もままならず、南会津郡只見町大字蒲生字久保の蒲生川橋梁で撮影を行うことにした。

「氷雪を穿つさざめき」~ F10・SS1/640・ISO200 ~
車両は14:42頃通過の上り430D。車両通過の20分前まではそこそこ強い雨が降っていたが、雨雲は去り青空が垣間見えた。町中の至る所では雪解け水が滔々と音を立てて流れ、季節の移ろいを奏でている。ここ蒲生川も、思った程の増水には至っていないものの、清冽な流れが雪の塊を削りかのようだった。この蒲生川をフレーミングできる構成も、これから季節が進み、土手の草木が勢いを増せば、橋梁の姿は覆われ隠されてしまう。

最後は再撮影を考えていた大沼郡金山町大字横田字山根に戻る。車両は15:41頃通過の下り427D。朝のような薄曇りを期待していたが、日が伸びた影響で背景の山々に光が回り、コントラストや色彩感がイメージから離れてしまった。
また現在の充当運用では427Dが単行となっており、車両後方の民家を隠しきれなかった点も悔やまれる。来週辺りに再挑戦のチャンスがあるだろうか‥思いながら、その頃にはこの雪も半分ほどに減っているに違いない。
さて奥会津へと向かう道中、05:00頃に会津平を通過した。夜明け前の暗さの中でも、その一帯に残雪が無いことは分かる。柳津町に入ると道路脇に僅かな雪の塊が見て取れた。三島町や金山町も路面に雪はないものの、人の入らぬ場所にはまだまだ深い残雪がある。それでも春彼岸の頃を過ぎれば、山を歩くことが叶うかも知れない。
そう言えば先日、庭先で芽吹いたフキノトウを天ぷらで頂いた。蛙の詩人と称される草野心平の作品に、一点の「●」のみで構成された「冬眠」という詩がある。動植物がじっと冬の寒さに耐える姿を象徴した一作だ。そんな寂しい季節もようやく終わりを迎え、光の春がやって来る。そう思うと、これから何か良いことが起こるような気がしてならない。
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