青嵐と翠雨に烟る只見線

M.Hermitage

09日(土)、この日の奥会津、06:00前には雨が上がり、次第に天候が回復するとの予報に、もしかすると朝方は薄曇りの撮影日和かと出掛けてはみたものの、予報は大きく外れ傘は飛んで粉々になる、激しい雨で機材は濡れるなどなど、なかなか厄介な一日となった。

始発便は大沼郡三島町大字早戸字滝原からの第三只見川橋梁で撮る。雨脚が残っていてもスノーシェッド内なので濡れずに撮影が出来るため、最初の撮影は此処に決めていた。GW中は賑わっていたポイントだが、この日は私の他に一組だけだった。風があって写り込みは望めそうにないが、個人的に此処からの眺めは特に気にすることではない。


翠雨滴る」~ F8・SS1/100・ISO640 ~


車両は05:54頃通過の上り422D。通過を待っていると雨が降り始め、この時期としては暗い環境だった。いつものように左の木々で橋梁を隠す画作りを行う。本来は列車をもうちょっと橋梁の中央に置きたいのだが、枝々がだいぶ伸び橋梁の半分を覆ってしまいそうな勢いだ。


季節は桜が散り山々は緑濃くなり立夏に至る。とは言え、天候はなかなか安定せず、奥会津での朝の撮影は未だ冬用の上着や手袋が必要だった。撮影を終え車に乗り込むと、天気予報に反し、雨は止むどころか強くなってきた。


続いては数週間に渡り、天候が良すぎて撮れなかった大沼郡金山町大字西谷字下川原からの第五只見川橋梁へ向かう。風雨は強まり川面は御覧のような荒れ模様に、そもそも撮影できるか否かも定かじゃない状態だったが、雨だけなら何とかなると判断し準備を始めた。この地では上下二便を撮る予定で、話しは前後し下画像は08:19頃通過の下り423D。


青嵐烟ル」 ~ F8・SS1/200・ISO200 ~


車両は07:58頃通過の上り426D。先述の通り川面は波立ち、極力それを構図から外すフレーミングを行った。実のところ、撮影に至るまでが大変だった。突風で三脚に設置した傘が川沿いへ飛ばされ壊れ、必要なので川まで降り回収して直す。その間に強い雨で機材が濡れ、撤収も頭を過ぎったが、カッパ着用で身体は濡れずに済んだため、留まることにした。


426Dと423Dを撮り終えて気付いたのは、今更ながら川面の荒れにも”格好の良い形”があるということだ。423Dの画像をupしないのはその理由で、426Dの川面は荒れていても美しい。


昼前には下りの風っこ只見線満喫号が通過するが、雨は降ったり止んだりを繰り返し、空を見上げながら次は何処で撮るかが決まらない。再び第五橋梁という選択肢もあり、天候や川面の様子を眺めていたが、改善の気配はなく大沼郡金山町大字横田字山根に向かえば、雲の流れが早く、大粒の雨が降ったかと思えば青空が覗くなど、相変わらず安定しない状況だった。


懐音の刻」~ F10・SS1/400・ISO320 ~


車両は11:33頃通過の風っこ只見線満喫号、下り9427D。先程の傘はその役割を終え、只見町内で新たに購入した傘を使う。列車通過時には雨が止み、幾らか明るい環境となった。↓動画でもご覧頂けるが、奥会津の山々に響く40系のタイフォンは郷愁を誘い、胸の奥がじんとする。タイトルにはそんな思いがある。


目の前を通過した風っこだが、乗客は半分も乗っていなかったように見えた。この数年、風っこの乗車率の低さを度々耳にするが、それはおそらく接続の悪さが影響していると思う。


例えば東京方面からの場合、始発の新幹線に乗っても間に合わない。また只見川の場合、以前は風っこに合わせ、臨時列車が小出~只見間で運行していたが、現在は只見駅が棒線化されて叶わないなどなど、運行時刻や接続の利便性を考える必要があると思う。


只見駅で折り返す風っこを叶津川橋梁、南会津郡只見町大字叶津字下稲田で撮影する。昼過ぎて雨が上がり天候は安定してきたが、大きな雲が次々に流れ、陽射しは定まらない。先週は叶津川沿いから撮ったので気付かなかったが、一部の田んぼには水が張られていた。


山笑ふ」~ F10・SS1/160・ISO200 ~


車両は12:53頃通過の只見線満喫号、上り9428D。通過前は陽光に照らされた新緑の山々が美しかったのだが、太陽は雲に隠れてしまった。気が付くと今春は写真のタイトルに「山覚める」や「山笑う」を使っていなかった。その理由を考えてみると、季節の流れが早過ぎるのか、そのタイミングに出会えなかったように思える。


併し季語としては遅いかも知れないが、山々の樹木がユサユサと笑っているように見え、時期ではなく、山が生命感を帯びている状態を指す言葉として、このタイトルを選んだ。


帰路の途中、大沼郡金山町大字越川字大川を通過する9428Dに十分に間に合いそうなので待機する。先週は時間帯が合わずに撮ったため、upを見送っていた。その際、右側の樹木には無かった新緑がこの一週間で芽吹いていた。


風光る」~ F10・SS1/640・ISO320 ~


車両は13:22頃通過。雲間から太陽が顔を出し、一瞬にしてコントラストが強くなる。思えば今日の撮影は何れも列車通過間近まで露出が決まらず、この画像も列車が見えてから調整したが、タイトルはそんな状況の中で頭に浮かんだ。


この構図、二両編成は木の間に挟まれ入り切らないが、画像下部のソテツと背景の杉林など、高原列車のような何処かのリゾート地のような、何故かそんなイメージが膨らむ。


最後は会津平にて夕刻の便を撮る。場所は大沼郡会津美里町米田字鴨田乙の桧ノ目踏切~根岸駅間。本数の少ない只見線だが、会津若松と会津坂下間を往復する便もあり、この時間帯は上下四便が行き交うゴールデンタイムと言えるかも知れない。


この日はそれら全ての便を撮ったものの、朝からの雲模様は最後まで改善されず、次回への課題となった。尚、上画像は17:28頃通過の下り431D、下画像は18:39頃通過の上り432D。


さて予報に裏切られ、傘を壊し、機材を濡らしながらの撮影となったが、終わってみれば雨風がなければ出会えなかった奥会津がそこにあった。穏やかな水鏡も魅力だが、荒れた川面に美しさを見出した瞬間、ものの見方が少し開けたような気がする。自然の気紛れに翻弄されつつも、山々に響き渡る40系のタイフォンを聞きながら、最後には風光る瞬間にも立ち会えた。そんな幸運に感謝しながら、また次の季節もこの鉄路を追いかけてみたい。


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