閑寂の時

カメラに触れず一ヶ月強が過ぎました。秋暑の頃は嘘のように静まり冷たい風が吹く日暮れは、何かしら物悲しいような寂寞の感を覚えます。以前も書いたけど撮影から離れているとそれが当たり前のようになり、何かを撮りたいというような気持ちも湧かなくなってしまった。そんな状況の中、このままではいかんと今回も昔撮った画像を再現像再upしてみます。


閑寂の時」~ F8・SS25・ISO320・ND400 ~


南会津郡下郷町大字大内字山本の大内宿です。大内宿を初めて訪れたは40年ほど前になり当時は現在のような様相ではなく、集落の中を車で通過出来た記憶がある。そして車が通過した後の砂埃と茅葺き屋根といった映像が今も甦ります。県内屈指の観光地でありながら、実はこの撮影以降何故だか足が遠のいています。


撮影日時は2011/11/12、16:21頃。最後の観光客が帰って行く様を長露光で撮ってみました。この日は午前中より撮影していたけれど、なかなかイメージする内容が撮れずにいました。とはいえこれがイメージ通りという訳でもないが、観光地の喧騒が静まり閑寂の時を迎える瞬間だったように思います。


この年の春には東日本大震災があり、福島県内の観光地に訪れる人はいなくなりました。それでも秋になると徐々に人出が増えてきたけれど、色々な意味で厭世感というか寂しさや苦しさを覚える一年でした。もしかするとそんな心境がこの画像に現れているのかも知れません。


老婦人の夏」~ F10・SS1/1.6・ISO200・C-PL+HALF ND4 ~


こちらは2014/09/21、17:41頃撮影の南会津郡南会津町井桁、国道352号線沿いにある藁葺き小屋です。これ迄は住所を南会津郡南会津町森戸としていたが、グーグルマップにて新たに調べたところ南会津郡南会津町井桁と表示されたので変更します。


何処からどう見ても原風景そのものといった景観に心惹かれ、何年も撮り続けた場所です。併しながら後に記載するが今現在はちょっと残念な景観になってしまいました。いつだったか小屋の扉が開いていたので中を拝見したことがあり、農機具や裏側に建つお墓で使われるであろう道具や式具などが並んでいた。


冒頭で述べたように秋は何処か物悲しく、一人遠く離れた場所での夕暮れなどは特にそんな郷愁感に包まれます。いい年した親父が書くような内容じゃないけど、無性に早く帰らなくてはとの焦燥感に駆られ、そんな風な時折りの心境・背景が個人的に写真を撮る上での大きな要素になっているのかも知れません。言い換えると写真鑑賞の際に於いても、撮影者の心境や背景を想像・連想するよう心掛けています。


さて先に述べたちょっと残念な景観についてだが、何度も書いているように2014年末より小屋の左側にトマトのビニールハウスが並んでしまいました。上画像は昨年の夏頃に撮ったものだが、これまでのような横構図による作画は難しなりました。


このビニールハウスが立っている一帯はソバが植えられたりと、また一つ佳き景観が失われてしまったことが残念です。以前周辺の雪掻きをしていたご老体と話す機会があり、伺えばたまたまその方はビニールハウスが立つ土地の地主でした。曰く安直に土地を貸してしまい、彼自身も失われた景観を後悔、ビニールハウスの移動は難しいとのことだった。


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