川霧の奥会津、幻想の夏の朝

10日(土)、先週に続き土曜日の只見線撮影。いつもの日曜と異なり人出が多く、第三橋梁では八台の三脚が並んだり、西方集落からの第一橋梁撮影ポイントでは満員状態になった。


さて只見川の川霧、早朝は旺盛に立っており国道252号線の水沼橋からも第四橋梁は見えず、この状態が続けば各俯瞰ポイントは撮影不可だったかも知れない。こんなときはまず大沼郡金山町大字川口字中山のかねやまふれあい広場から大志集落を眺める。

此処からも集落が隠れるほどの川霧が立ち、徐々に流れ行くタイミングを待つ。この数年只見線を撮っている次第だが、各所で樹木が伸び景観が遮られる。例えばこの白丸部の樹木も年々成長し、特に左側は構図内の下部に入り込んでしまうなどフレーミングが厄介だ。


大志夢幻」~ F8・SS1/25・ISO200 ~


そんな訳で以前のような引いた画角だとそれら樹木が入り込んでしまい、知らず知らずの内に中望遠の画角が多くなっている。そしてそれより何よりこの日は霧がなかなか流れず、始発の時刻が迫りこの画像がやっとといった状況でタイムアップ。


この時は私の他に一人、撮影が終わる頃に始発と集落を撮る人々がやってきたが、それまでは車の往来もなくそれはそれは静かな時間だった。初めてこの景観を見た時の感動は忘れてしまったものの、夏の夜明けの幻想に包まれているとスッと脳内が浄化されて行くようだ。


始発を何処で撮るか、川霧の季節はその状況によって変わるので特に決めていない。それでも早戸俯瞰が頭にあったが、確認すると完全なホワイトアウトとなっており、ここ何度か上手く行かなかった大沼郡三島町大字早戸字滝原の第三只見川橋梁にする。


車両は05:56頃通過の上り422D。この辺りの川霧はそれ程ではなく、橋梁を中心とした横構図は見送ることにした。それにはもう一つの理由、雨が続き川面の色が芳しくないのだ。


梅雨滴ル」~ F8・SS1/125・ISO500 ~


この構図は川霧でなはく山霧重視、併しその山霧もパッとしない。冒頭で八台の三脚と記したが、皆さん橋梁を中心にした横構図の立ち位置。端っこで縦構図で待機する私の所へ来てはどう見えるのか尋ねる。多くは他県からの方々で矢張り定番の構図を抑えたいのだろう、その後縦に構える人はいなかった。


梅雨しとど」~ F8・SS1/160・ISO800 ~


第三橋梁撮影後、国道400号線から第二只見川橋梁を眺めれば、既に数人が待機しているものの橋梁はホワイトアウトで見えない。従って大沼郡三島町大字名入字上居平、第二野沢街道踏切付近に車を停める。


車両は「梅雨滴ル」と同じ422D、通過は06:03頃。列車音が近づき急々の手持ち撮影となり、動画は撮っていない。此処はこの数年で整備されたポイントで、それ以前は紫陽花や後に初めて名前を知った朱色の花が咲いていた。現在は柵が設置され以前の草花は刈られてしまったのだろうか、僅かながら片隅に紫陽花が咲いていた。因みに「二年前」の様子。


続いて大沼郡三島町大字西方字居平からの第一只見川橋梁撮影ポイントへ向かう。始発を撮り終えた方と入れ替わり三脚をセット。ご覧のように絶景というべき眺めになるも、毎度のように霧は刻々とその表情を変え、それこそ列車通過時にどうなるか予想は付かない。それにしても此処も樹木が伸びてきました。更に立ち位置が狭く限られるので構図は似たり寄ったりとなってしまう。

撮影車両は07:23頃通過の下り423Dと07:41頃通過の上り424D。上画像は後者の424Dで撮影時に陽が射し込んだ。列車が来る前には川霧が山へ向かって上昇する様子を見たが、それはまた幻想的な自然現象であった。


幽 谷」~ F8・SS1/160・ISO250 ~


423D通過時、川霧は立っているものの山霧は希薄となる。いつものことだがそれを予想、通過前の景観の良い時を撮り置きレイヤー合成を行う。


以前、撮影の合間に隣りに立つ人と話したことがある。風景写真は陽射しや風などを待ち、自分の好みの状態でシャッター切ることが出来る。方や鉄道写真はその時に列車が来なければどうしようもない。その最たるものに川霧があり、列車通過の前後が良いという格言の如く、苦労して俯瞰ポイントに立ってもそれはギャンブルに近いものがある。時としてそれに疲れることがあり、時とした次こそはと奮起することもある。何れにせよ同じような眺めであっても、その都度異なる自然の様はその場に立った人間にしか分からない。


太陽が顔を出し川霧は消え行く。従って今回も会津盆地へ車を向ける。上画像は大沼郡会津美里町米田伍姓部の根岸駅周辺。下画像は大沼郡会津美里町新沼尻の会津高田駅周辺。この一ヶ月、会津盆地を徘徊するが春の銀田、秋の黄金色、そして夏の緑田も好きな景観だ。


会津野ヲ行ク op.4 ①」~ F10・SS1/250・ISO250 ~


会津野ヲ行ク op.4 ②」~ F10・SS1/320・ISO320 ~


①は第一橋梁で撮った08:32頃通過の上り424D、②は10:12頃通過の上り426D。天候は曇りながら毎回書くように会津盆地特有の暑さがある。それにしても緑田が美しく、暑くても目では爽やかさや清々しさを感じる(とはいえ②はほぼ雑草だが‥)。撮影に関しては前回の撮影記で触れたことに留意し、①②とも中望遠にて画作りする。


さてこれは個人的見解だが、三島町や金山町は只見線各橋梁のダイナミックさや、それに相対しそこに生きる人々の優しさを感じる。金山町から先は只見線の深層部とでもいうのか、ある意味神がかりな趣きさえ感じる。そしてこの会津盆地は何といってもこの田園風景やポツンと点在する無人駅。そんな景色を眺めながら古の会津の歴史に思いを馳せれば、何かしら心が豊かになったような気持ちになる。


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