息を急くかの如く咲く桜

入学式といえば桜といったイメージがある。併しながら私が小学校の頃、校庭の桜が咲き始めるのは四月下旬であり、入学式=桜の図式は西日本方面といった感覚だった。ところが年々開花が早くなり、この辺りでも入学式=桜がデフォルトとなりつつある。


そして今年は更に早く三月末の開花となり、待ちに待った東北の春の到来は身も心も嬉しい。併し春が早くやって来たことをどうも手放しで喜ぶことが出来ずにいる。つまりそれは温暖化ということであり、この半世紀で様変わりした景色を目にしちょっと恐ろしささえ感じる。


さてこんな事柄を一個人が考えたところで何も変わることはなく、今回も在庫の画像から春らしいものを再現像してupします。


春を惜しむ人」~ F10・SS3・ISO125・ND400 ~


2016/05/03の13:20頃、耶麻郡北塩原村大字桧原字滝ノ原の桧原の一本桜で撮影しました。撮影記は「耶麻郡北塩原 桧原の一本桜」。毎年GW後半に満開となる遅咲きのオオヤマザクラの姿は、麗らかな陽気の中に過ぎ行く春を惜しむかのようです。この桜が散ると裏磐梯は爽やかな初夏へと移行、多くの観光客で賑わいます。


昼過ぎての撮影は普通に撮れば普通の内容になってしまうが、三脚が飛ばされそうな風が吹いており、長露光にてその風を利用した画作りを行いました。長露光撮影は撮っては確認を繰り返しイメージする花や葉の揺れ具合を模索します。そうこうしていると初老の男性が手前の木の根元に立ちました。これはチャンスと素早く構図と露出を決め、露光中は男性が動かないことを、そして適度に風が吹くことを願いました。


結果として太陽で暖まった土や枯草の匂い、そして先述したように麗らかな春の陽射しを感じる絵画的画像になったと思いますが、これはちょっと手前ミソかも知れません。実のところ一度ボツにした理由は背景の空が原因でした。トリミングという手段もあるけど、確か以前にも書いたことがあるように、その時はファインダー越しに良いと思ったフレーミングであり、出来ればトリミングには頼りたくありません。


花冷えや乗客様は閑古鳥」~ F8・SS1/200・ISO320 ~


此方は撮影は2019/04/21、河沼郡柳津町大字郷戸字居平丁の滝谷駅07:45発の上り424Dです。撮影記は「河沼郡柳津町 只見線と桜+etc」。約一時間前の始発便を同町の福満虚空蔵尊裏で撮ったが、桜が咲く季節となっても奥会津の朝は寒いです。撮影は線路上の県道32号線からだが、此処は橋桁に落下防止の金網が設置され構図が限られてしまうのが難点です。


タイトルは閑古鳥としたものの、↓動画のように一人乗りました。駅を撮る際は乗客がホームに立つ姿を期待するのだが、多くは列車が停車間直になって駅舎などから歩み寄るといった状況であり、そんなイメージを具象化するには居合わせた乗客に頼んだり、サマオクをモデルに撮ったりしたものです。反して朝の通学時はホームに出て列車到着を待つ学生が多いです。


さてこれは1970年頃の画像です。近くには会津西山温泉があり、当時は駅を出ると旅館案内所があったようです。携帯電話が無かった時代、無予約の場合は案内所を利用するようになり、多くの駅前にはそういった施設が隣接していたことを思い出します。

当時の滝谷駅は交換駅で貨物列車の引き込み線もありました。現在使われている線路は左側になり、ホームを挟んだ左奥は今も痕跡が残る引き込み線です。併し一番目を惹くのは現在その形跡すら見当たらないC11が停車する上り線と、右端の待合室のような駅施設で、その奥には滝谷川橋梁が見えます。因みに1971年8月には貨物・荷物の取り扱い廃止&駅員無配置駅となるが、それ迄は重要な流通拠点であり、そして交通手段として賑わっていたと推測します。


春はあけぼの」~ F10・SS1/25・ISO200・HALF ND8 ~


最後は喜多方市山都町朝倉字葛祖乙の棚田の桜です。撮影日時は2019/04/28の05:16頃。田んぼはいつ頃まで耕作されていたのだろうか、現在はご覧のようにかなり荒れた状態になっています。撮影記は「喜多方市山都町 棚田の桜+etc」。撮影記でボツになっている画像は今回の別カットになります。


この場所に到着するまでの山間では氷点下の地点もあったりと、この時期の西会津の早朝も寒かったです。でもそれは上手く表現できないが、冬とは異なり陽が昇れば暖かくなることを身体が知っているからか、余裕がある寒さといった感じでした。撮影準備を行っていると山霧が流れ始め辺り一面を包むことを期待するが、陽が射し始めると次第に消えてしまいました。


撮っていて難しかったのは陽が射した背景の山々との対比でした。撮影時ボツにした画像もそれが理由だが、今になって陽が射す前に撮った画像を消去しなければ良かったと後悔しています。タイトルには”曙”を使ってみたが、その時間帯には遅く、且つその色合いでもありません。併しながらその景観は”やうやう白くなりゆく山際‥”の件が頭に浮かんでいました。


・・・04/05 追記・・・ この棚田は1977年に地滑りが発生、それ以降の耕作は行われていませんが、荒廃する景観を惜しみ桜が植えられたようです。


@タイトルをクリックするとフォト蔵の大きな画像(別窓)が開きます。